従業員の休憩室に監視カメラを設置することは認められる?

例えば休憩室に備品や商品が置いてあり、盗難被害が生じている現場では、「休憩室の監視カメラ設置」に踏み切るかどうか、頭を悩ませる事業主様も少なくありません。職場内の監視カメラに関しては、防犯の観点からごく当たり前に設置されていて、これに疑問を感じる方は少ないでしょう。ところが、「休憩室に監視カメラ」となれば、たとえ防犯の側面があったとしても、従業員から業務時間外の過度な監視と認識される危険性がある上に、休憩室の意味合いによってはカメラの設置自体が問題となる可能性もあるため注意が必要です。

「休憩室に監視カメラ」は直ちに違法、プライバシーの侵害とは言えない

休憩室に監視カメラを設けることは、原則として、違法とは言えません。確かに、休憩室にいる時間というのは主に業務から離れた時間であることから、ここで過ごす時間に関してプライバシーが保護されるべきという議論もあるでしょう。しかしながら一方で、職場はその性質上「公的な場所」と考えることができ、このような場所においてプライバシーは一定限度放棄されるものと考えられています。

場所によっては行き過ぎた監視行為と判断される可能性が高く、注意が必要

ただし、トイレや更衣室にまで監視カメラを設置するのは行き過ぎた監視行為と判断される可能性が高く、倫理上問題となり得るため注意しましょう。例えば、制服着用義務のある事業所で休憩室を更衣室として利用している実態があり、他に更衣室がない場合、休憩室の監視カメラ設置は適切とは言えません。

カメラの設置にあたり、従業員に「目的」「場所」「管理・運用方法」の周知徹底を

休憩室に監視カメラを設置する際には、「なぜ設置するのか」「どこに設置するのか」「映像管理や活用の範囲」等をあらかじめ従業員に周知しておくことが肝心です
休憩室に監視カメラを設置する場合、会社としてはそうすべき理由があると思いますので、そのあたりをしっかり説明して従業員の理解を得るようにしましょう。休憩室に監視カメラを設ける理由として、よく耳にするのが「休憩室に置いている備品がたびたび無くなる」「休憩室にロッカーを設置しているが鍵がかからないため盗難の心配がある」「休憩室で見ることのできる店内監視カメラ映像を従業員が写真に撮ってSNSにアップしてしまう」等です。
従業員感情として、休憩室の監視カメラは確かに抵抗が感じられるものですが、その目的が明らかにされており納得のいくものであればさほど異論は挙がらないでしょう。併せて、設置箇所についてもあらかじめ周知しておきます。

備品横領やSNS投稿への対策に、カメラ設置と併せて「就業規則の整備」を

今号のテーマである「休憩室の監視カメラ設置」は労使間で意見が分かれる話題であり、しばしば労使間トラブルの原因ともなり得るポイントです。労使関係は双方の信頼の上で成立するものですから、本来であれば「休憩室に監視カメラなど不要」と考えるべきところなのですが、会社としてやむを得ない事情により設置に踏み切るケースもあるでしょう。その場合には従業員に事前告知をしておくこと、休憩室内だけでなく社外で休憩することも可能にすること等の配慮が肝心です。また、カメラ設置の背景にある問題については、就業規則整備など別の観点からの対策も併せて検討しましょう。例えば、備品の横領が頻発する場合であれば備品の取扱いや利用制限、持ち出しに関わるルールを盛り込み、その上で、備品についてルールに反する不適切な取扱いを禁じること、懲戒処分の対象となることを明記します。また、従業員のSNS投稿についても、不適切な投稿の禁止や違反した場合の処分、損害賠償請求について規定することが考えられます。

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