
「時間外・休日労働に関する協定届(以下「36協定」)」といえば、従業員規模を問わず、ほとんどの事業場で締結・届出を行っている労使協定の代表格です。36協定届は有効期限を定めて締結・届出をするものですが、とりわけ「4月から翌年3月の一年更新」とする現場が多く見受けられます。新しい年を迎え、少しずつ、2025年の時間外・休日労働の実態確認、2026年の協定内容の検討を意識されることをお勧めします。
目次
そもそも、36協定とは?
法定労働時間(原則「1日8時間、1週40時間」)を超えて、もしくは法定休日に従業員を働かせることは、原則として労働基準法違反です。そうは言っても、円滑な事業運営や業務上の必要性から、ある程度の時間外・休日労働は避けて通れない現場がほとんどだと思います。このような現場で締結・届出するべき労使協定が、36協定です。
36協定とは、事業所において、時間外・休日労働が生じる業務範囲や従事する労働者数、発生する時間外労働時間数、休日労働の頻度等を所轄労働基準監督署長に届け出るものです。労働基準法により禁止されている法定労働時間超や法定休日における労働について、36協定で届け出る範囲においては、罰則の適用から外すことができます。
参考:
東京労働局「時間外労働・休日労働に関する協定届 労使協定締結と届出の手引」
東京労働局「時間外・休日労働に関する協定届(36協定届)」
新様式対応!36協定届の作成方法をわかりやすく解説
36協定届の様式をご覧いただくと、「色々と決めなければならない項目があって、何だか複雑そうだな」「どのように書けばよいのだろう」と迷われる方も多いのではないでしょうか?そんな時に参照したいのが、豊橋労働基準監督署が公開する「時間外・休日労働に関する協定届の作成・届出手続方法」です。事業場ごとに必要な届出様式や具体的な記入方法が、順を追ってわかりやすく解説されています。
参考・豊橋労働基準監督署「時間外・休日労働に関する協定届の作成・届出手続方法」
まずは資料をご確認いただいた上で、特に重要なポイントを解説していきます。
36協定ポイント①「事業場ごと」の締結・届出が原則
複数事業場のある企業において、36協定は本社のみで締結すれば良いというわけではなく、それぞれの事業場で締結し、所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。ただし、届出に関しては、電子申請による本社一括届出が可能となっています。複数事業場を有する企業においては一括届出を活用し、業務効率化にお役立ていただけます。
参照:
厚生労働省「就業規則・36協定の本社一括届出について」
厚生労働省「労働基準法等の規定に基づく届出等の電子申請について」
「時間外労働の上限規制」に要注意!36協定により認められる時間外・休日労働には上限があります
36協定における時間外・休日労働の設定は、「時間外労働の上限規制」に則る必要があります。まず原則として、時間外労働は、厚生労働大臣の告示(限度基準告示)が定める労働時間延長の限度の範囲で検討しなければなりません。具体的には、「月45時間・年360時間」を超えることはできないとされています。ただし、臨時かつ特別な事情がある場合には、あらかじめ「特別条項付36協定」を締結することで、限度基準告示を上回る設定が可能となります。しかしながら、特別条項付36協定を締結する場合でも、以下の「時間外労働の上限規制」の要件を満たすことが大前提となります。
・ 時間外労働が年720時間以内
・ 時間外労働と休⽇労働の合計が月100時間未満
・ 時間外労働と休⽇労働の合計について、「2ヶ月平均」「3ヶ月平均」「4ヶ月平均」「5ヶ月平均」「6ヶ月平均」が全て1月当たり80時間以内
・ 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月が限度

出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
36協定届が協定書を兼ねる場合は、従来通り、押印・署名が必要
現在、36協定届では「押印・署名廃止」が認められていますが、これは36協定届とは別に、「協定書を作成し、労使協定を締結している場合」の取扱いであり、実際には多くのケースで依然として36協定届への押印・署名が必要です。
36協定の届出とは本来、労働者代表と使用者で合意の上で36協定を締結し、この協定書の内容を36協定届に記入して労働基準監督署に届け出るものです。この場合、協定書に押印・署名がされているので、重複して協定届にも押印・署名をする必要はありません。ただし、実務上、別途協定書を作っておらず、協定届と協定書を兼ねる形で対応する場合、届け出る36協定届に押印・署名が必要です。今回の法改正ではあくまで「行政への届出書類に関わる押印・署名の廃止」が認められたのであって、労使協定そのものに対する押印・署名は廃止対象外となっているためです。
関連記事:『【2021年4月】またまた、36協定届が変わります!ポイントは「押印・署名廃止」「労働者代表に関わる適格性の確認」』
従業員代表者の選出が不適正であれば、協定は無効
36協定の締結を考える上で、注意すべきことのひとつに「従業員代表者の選出」が挙げられます。しばしば「使用者からの声かけで従業員代表者が決まってしまう」といった例を散見しますが、こうした選出方法では適切な手順によって選出された従業員代表者とは言えず、協定自体が無効となります。
従業員代表者となることができる者の要件を、今一度確認しておきましょう。
✓ 労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者でないこと
✓ 使用者の意向に基づき選出された者でないこと
投票(無記名、秘密投票)や挙手・起立・回覧などによる信任等の民主的な方法により、適正に選出する必要があります。
関連記事:『不適正な36協定で書類送検!今一度見直したい、従業員代表選出ルールと時間外・休日労働の実態』
「何となく毎年同じ」はNG!実態に合った時間外・休日労働のご検討を
36協定の届出は毎年のことのため、現場においては「昨年と同じ内容で良いか」と安易に考えられがちです。もちろん、時間外・休日労働の想定が前年と同じであれば、結果的に届け出の内容が同じになっても問題ありません。しかしながら、実際の状況に則した内容でなければ意味をなさない他、上限規制違反には罰則として6ヶ月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金が課される可能性があることから、今年度の時間外・休日労働の実態を見直した上で、来年度の想定を適切に検討する必要があります。「自社での対応が難しい」「相談しながら検討を進めたい」という場合には、社会保険労務士への協定作成・届出代行のご依頼が得策です。
「実はまだしっかり勤怠管理ができていない・・・」という現場にとって、新年度は仕切り直しのチャンスです。HRMOS勤怠(https://www.ieyasu.co/)をご活用いただき、従業員の時間外・休日労働の実態を正しく把握していくのがお勧めです。

