脱ワースト1!ドライバーの健康のため全日本トラック協会が策定した計画とは?

2016年に厚生労働省が公表した「過労死等防止対策白書」で、業種別過労死件数のワースト1にトラックドライバーなどの道路貨物運送業が選ばれてしまいました。このことを受け、全日本トラック協会(以下、全ト協)はドライバーの過労死や健康起因事故防止対策を強化する旨を発表しました。本記事では、この計画や対策がどのようなものなのかについて解説します。

道路貨物運送業における過労死などの労災補償状況が過去最多に

厚生労働省は2017年の6月30日に、2016年度における「過労死等の労災補償状況」を発表しました。
この報告書によれば、脳や心臓疾患に関する事案で最も多かったのは道路貨物運送業です。その請求件数は145件(前年度より12件増加)、支給決定件数は89件(前年度より7件増加)でした。これらはいずれも過去最多の数字です。
また注目するべきポイントとして、事業用貨物自動車が第1当事者となる死亡事故件数は毎年減少しているにも関わらず、2004年以降は脳や心臓の血管疾患といった健康起因事故報告件数が増加していることが挙げられます。

健康起因事故による死因の9割が脳や心臓の血管疾患

道路貨物運送業の中でも、健康起因事故のドライバー数が最も多いのは①バス、②ハイヤー・タクシー、③トラックの順番であり、決してトラックのドライバーだけが多いというわけではありません。しかし死亡運転者数を見ると、実はバスのドライバーの死亡事故は報告されていません。ハイヤー・タクシーが一番で、次にトラックのドライバーが死亡運転者数が多いのです。
では死亡の原因でどんな病気が多いのでしょうか。トラックドライバーの死亡原因の9割は脳や心臓の血管疾患となっています。これをきっかけに、全ト協は既に定めていた運送事業者と運行管理者が実施するべき健康管理のためのチェックポイントである「トラック運送事業者のための健康起因事故防止マニュアル」の改訂版を2017年3月に公表することになりました。
また翌4月には過労死防止対策に取り組むための組織である「過労死等防止計画策定ワーキンググループ」を発足させ、長時間労働対策や健康管理対策、過重労働対策などを行動計画として策定することになったのです。

全日本トラック協会が開始した、事故予防のための前のめりな対策の数々

このような過労死等事故防止計画策定に先立って、全ト協は陸上貨物運送事業労働災害防止協会(陸災防)や労働者健康安全機構とともに、啓発活動である「過労死等防止・健康起因事故防止セミナー」を日本全国47都道府県で開催しました。
また、脳や心臓疾患の原因の多くが高血圧であることから、血圧計54台を配布する取り組みも始めました。これは乗務前点呼の際の血圧測定を普及させることを目的としています。
そのほかトラックドライバーに特化した「運輸ヘルスケアナビシステム」の構築にも着手し、健康起因事故につながりやすい要素を持つドライバーの可視化と予防対策の推進をサポートすることになりました。これは定期健康診断の結果をもとにその後の健康回復を支援することが狙いで、2017年度は10月31日まで40社・約2000人の参加を募ってシステムの実証実験を行っています。

過労死件数ワースト1という不名誉の挽回による、社会的インパクトを期待

トラックドライバーが全業種の中でも過労死や過労死につながる健康起因事故においてワースト1となったことを受け、その状況を改善するために様々な計画や対策が実施されています。陸上貨物運送は日本の経済活動の要とも言える業種であり、そのような業種で過労死などの件数が多いことは大きな社会的問題でもあります。
今回策定された計画や対策が実を結べば、それは日本社会全体での過労死や健康起因事故の減少にも大きく貢献することとなるでしょう。

期待が高まります。

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