2018年12月、株式会社リクルートキャリア就職みらい研究所が2019年のトレンド予測発表会で新卒採用領域のトレンドキーワードとして「就域」を発表しました。
参考:新卒採用領域の2019年トレンド予測を発表 キーワードは「就域(しゅういき)」-株式会社リクルートホールディングス「2019年トレンド予測」より-
この就域という単語はあまり聞き馴染みのない単語かもしれません。
しかし、今後新卒採用を担う人事担当の方は知っておくべき単語と言えます。
では、就域とはどんなことを示すのでしょうか。本記事で解説します。
就域とは?
現在の日本は人口が東京一極集中しており、地域に若者が少ないという場所も少なくはありません。
そこで、地域の中小企業と行政・金融機関が連携することで、地域に若者が定着するための支援を行う取り組みが増加しています。特に中小企業などいくつかの採用競合相手が地域でコミュニティを形成し、次世代を担う若者を街ぐるみで育み彼らの定着を促すことで、地域振興を図っています。
「若者を定着させる」という共通の目的を果たすために、本来採用市場における競合他社であった企業どうしが共同で、採用活動や内定者に対して研修活動を行っているのです。中小企業1社では難しかった、その地域で働く魅力を発信させ、また採用や新入社員の育成に手厚いプログラムを提供できるようになります。
さらに合同で研修を行うということで、研修を通じて学生同士がつながりを持つきっかけにもなります。学生に安心感を持って地域に根差すことを促しやすくなります。地域への愛情を持ってもらうことができれば、たとえ都市部に就職したとしても、後にUターンあるいはIターンで戻ってきてくれることも期待しやすくなるでしょう。
このような取り組みのことを、「就域」といいます。
なぜ「就域」が注目?地域での採用における課題
日本の若者の比率は現在も減り続けています。
それら若者の多くは東京・大阪・名古屋の三大都市圏へと流出してしまうため、都市圏と地方圏で人口格差がますます大きくなりつつあります。
地方圏から都市部への人口流出が起こる要因として、地方自治体の「良質な雇用機会の不足」が原因であると考えられているのです。その雇用機会の確保のために、地域ぐるみで採用や育成を行う就域が注目されているのです。
「就域」は必要?若者は地元で就職したいのか
ただ、そもそも若者は地元で就職することを望んでいるのでしょうか?
地方に良質な雇用機会がないことも原因とはいえ、そもそも「学生は都市部に魅力を感じている」とも考えられるのではないでしょうか。
株式会社リクルートキャリア就職みらい研究所が2015年から2017年にかけて行った調査によると、上述の仮説は間違いです。
「地元で働きたい」と希望する学生が「地元で働きたくない」学生を上回ったという結果が示されています。これは、学生の地元が三大都市圏であっても、地方圏であってもです。
この結果を受け、若者の多くは地元で安定して働きたいと考えていることがわかっています。
若者世代を地域で支援する「就域」
「就域」という形で若い世代を地域ぐるみで支援することは企業側にどのようなメリットがあるのでしょうか。
実例として、兵庫県豊岡市や北海道帯広市で就域が行われています。
人口流出に悩む市と、人手不足に悩む企業が合同の企画を実施しました。その結果、地域での採用率を向上したことはもちろん、新入社員の横のつながりをもたせ孤立を防ぐことにも成功しています。
「就域」によって地域に若者が定着する
2019年度の新卒採用トレンドキーワードは「就域」です。
地域に密着した企業と行政・金融機関が連携しながら若者に雇用機会を与え、街ぐるみで若者の定着を支援していく動きは今後加速していくと見られます。若者の定着により、企業の人手不足解消はもちろん、それから繋がる地域振興にも期待が大きくなっています。