労働者がライフスタイルに合わせて、自由に働く時間を決められるフレックスタイム制。そんなフレックスタイム制を採用している企業では、残業をしても残業とみなされないのではないか、という誤解を生んでしまうことがあります。
もちろん、フレックスタイム制でも残業は認められるのですが、なぜそのような間違った認識が生まれてしまうのでしょうか。企業側は労働者に正しく賃金を支払う義務があり、労働者もまた、正しい知識を身につけることが重要です。
フレックスタイム制における残業代のルールについて、改めて確認しておきましょう。
フレックスタイム制とは?
フレックスタイム制は、1ヶ月以内の清算期間と総労働時間を企業が定めることによって、その枠内であれば始業や就業の時間を、労働者自身が決められるというものです。
必ず出勤していなければならないコアタイムと、決められた時間内であれば、いつ出勤しても構わないというフレキシブルタイムを設ける。もしくは、フレキシブルタイムのみの設定も可能です。
このフレキシブルタイムでの労働が、残業代の有無に大きく関わることになり、誤解を招いている原因でもあるのです。
残業代が支払われるしくみ
通常の勤務形態であれば、残業代が支払われるしくみはシンプルです。1日8時間・週40時間の労働時間規制を超過する場合には、通常の賃金よりも25%以上の残業代が支払われます。
一方フレックスタイム制では、この労働時間規制の代わりに、清算期間における総労働時間によって、それを超える時間外労働があれば残業代が支払われることになるのです。そのため、たとえ週40時間の労働時間規制を超えていても、総労働時間内に収まっていれば残業代が発生しないというケースもあります。
「清算期間における総労働時間」とは?
フレックスタイム制においてよく耳にする「清算期間」や「総労働時間」とは具体的にどんな内容なのでしょうか。
清算期間とは
労働者が労働するべき時間を一定にした期間であり、1ヶ月以内であれば、1週間や2週間などの短い単位でも定めることができます。一般的には賃金の支払いに合わせて、1ヶ月単位で設定する企業が多いようです。
さらに、1日単位での労働時間も定めておく必要があり、その時間をもとに有給休暇などの算出をすることになります。
総労働時間とは
企業が独自に定めた所定労働時間のこと。「清算期間における総労働時間」とも表現されます。
これに対し、「清算期間における法定労働時間」というものもあり、こちらは法律で定められた最大労働時間という意味です。清算期間における法定労働時間の算出方法は下記のとおりです。
【清算期間の暦日数×40(時間)÷7(日)】
つまり、1ヶ月が31日であれば177時間、30日なら171時間という計算になります。企業が定める総労働時間は、この時間数よりも少なくなければならないという決まりがあります。
労働時間が総労働時間に対して過不足があった場合
では、清算期間における総労働時間に対して過不足があった場合、どのように計算されるのでしょうか。
実働時間が総労働時間を超過した場合
労働者の実働時間が、清算期間における総労働時間を超過した場合、企業は超過分の賃金をその月内で清算し、支払わなければなりません。つまり、翌月の清算期間の一部に充当することはできないということです。
実働時間が総労働時間よりも不足していた場合
実働時間が総労働時間よりも不足していた場合、企業側はその時間分を翌月の総労働時間に繰り越すことができます。ただし、合計された総労働時間は法定労働時間を超えてはいけない、というルールがあります。
この「不足分を翌月に繰り越すことができる」という点で、「企業側の都合が良い制度なのではないか」という解釈もあります。しかしこれは、むしろ労働者が労働を怠ったとみなされることを防ぐ意味合いもあるのです。
企業も労働者も守ることができる、フレックスタイム制の大きな価値を生んでくれるルールと言えます。
休日や深夜労働は計算方法が異なる
ここまで、時間外労働について確認してきましたが、休日やフレキシブルタイム以外の深夜の時間帯に労働をした時の賃金は、どのように支払われるのでしょうか。
割増賃金とは?
フレックスタイム制においても、週に1日、4週間に4日の法定休日を取ることが義務づけられています。労働者が法定休日に働いた場合、企業はその時間を総労働時間に加えてはならず、支払われる賃金は割増賃金という扱いになります。深夜の時間帯(夜10時〜朝5時)に労働をした際にも、割増賃金として支払う義務があります。
ちなみに法定休日の割増賃金は、通常の賃金の35%以上、深夜の割増賃金は25%以上である必要があります。
休日出勤したり深夜の時間帯に働くことを、時間外労働と混同されることがあります。時間外労働とはあくまでも法定労働時間を超えた労働のことであり、法定休日や深夜に労働すれば、それとは別に割増賃金が支払われることになります。
まとめ
フレックスタイム制は、文字どおりフレキシビリティに富んだ働き方です。しかしその一方で、それが災いして時間外労働や残業代の考え方があいまいになってしまうことがあります。企業全体がよりよいパフォーマンスを上げるためにも、この制度が正しく有効に活用され、今後さらに広まっていくことを願ってやみません。
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