
深刻化を増す人手不足時代を背景に、企業における「健康経営」の重要性はますます高まりを見せています。従業員の健康を守ることは、活力や性や生産性の向上、人材獲得・定着、離職率の低下等あらゆるメリットにつながりますから、昨今、企業における取り組みがぐんと進んでいるのです。ひと口に「健康経営」と言っても、その施策は多岐に渡ります。今号では、今まさにピークを迎えている「花粉症」にまつわる企業の支援制度をご紹介しましょう。
目次
健康経営の一環として、企業が「花粉症対策」に目を向けるべき理由とは?
春先、花粉症の諸症状にお悩みの方も多いのではないでしょうか?花粉症は命に関わる病気ではないものの、くしゃみや鼻水、目や鼻のかゆみ等の症状により、日常生活に支障をきたすようになることもしばしば。しかも、一度発症すると自然治癒はごく稀ということで、通院や投薬は長期に渡ります。年間を通して何らかの花粉の飛散が確認されていると言われますが、特に2~5月は一般的な花粉症シーズンとされ、多くの人がその症状に苦しみ、業務時間中の集中力低下や生産性低下に悩んでいます。
日本人の花粉症有病率は、実に50%近く
春になると毎年のように「花粉症」が話題に上がる背景には、日本において花粉症を発症している人の多さに起因します。環境省「花粉症環境保健マニュアル2022(2022年3月改訂版)」によると、日本における花粉症の有病率は1998年が19.6%、2008年が29.8%、2019年には42.5%と、10年ごとにほぼ10ポイントの増加が見られているとのこと。おそらく2025年時点ではこの数字がさらに増加し、日本国民の半数が花粉症を発症しているものと予測できます。花粉症はもはや「国民病」と言っても過言ではありませんから、従業員のパフォーマンス向上を狙う企業が対策に乗り出すのは理に適っていると言えましょう。
企業の約6割が、何らかの花粉症対策を講じている
実際のところ、従業員の花粉症対策に何らかの支援を行う企業の割合は、増加傾向にあります。株式会社マイナビが発表した「花粉症と仕事に関する調査」の結果によると、花粉症対策を実施している企業の割合は57.5%だそうです。企業における花粉症対策の内容については後述しますが、現状、何の対策も講じられていない現場では、前向きに検討できると良いでしょう。
企業における花粉症対策、どんな施策が有効?
健康経営の一環として企業が講じる花粉症対策には、どんな施策があるのでしょうか?同じく株式会社マイナビ「花粉症と仕事に関する調査」によると、「空調の整備(空気清浄器の設置等)」が最も多く53.1%、次いで「花粉症対策グッズの支給(マスクやメガネ、ティッシュ等)」が38.7%でした。
しかしながら、上記のような企業が実施する花粉症対策と、働く人が必要だと感じる花粉症対策には、違いがあることも分かっています。従業員側が「企業の花粉症対策として魅力的だと感じる対応」では、「花粉症手当の支給(花粉症の診察費・薬代・マスク代)(38.2%)」、「空気清浄機の設置など空調の整備(35.3%)」の順となっています。
出典:株式会社マイナビ「花粉症と仕事に関する調査」
健康経営事業における事例 ~クックデリ株式会社「花粉症手当」を新設~
最後に、企業における花粉症対策の一例として、クックデリ株式会社が2025年2月に新設した「花粉症手当」をご紹介しましょう。
同社では、社内にWell-being推進室を設置し、人間ドックや歯科検診の費用補助等の12項目に渡る福利厚生を実施していますが、このたび新たに社員の生産性向上のための花粉症手当を導入しました。導入の背景には、社内アンケートにおいて、社員の50%が「花粉症である」という事実と、うち89%の社員が「花粉症が自身の仕事のパフォーマンスに影響している」という実態が明らかになったことが挙げられます。
花粉症手当の内容は、以下の通りです。
〇 全社員に保湿ティッシュ3箱を配布
花粉シーズンの必需品であるティッシュを全社員に無償提供
〇 治療費を補助
花粉症に関する診療費や薬代にかかる費用を手当として支給し、経済的負担を軽減
参考:クックデリ株式会社「健康経営について」
企業において新たに花粉症対策を支援する際には、「無理なく継続できる」という観点からはもちろん、同時に従業員側の意見も十分ヒアリングした上で、内容を検討できるのが理想です。
御社では、どのような施策を講じられそうでしょうか?