【新型コロナウイルス】進んでいますか?労働保険年度更新 令和2年度の3つの変更点と進め方を確認!

連日、新型コロナウイルス感染症の話題が後を絶ちませんが、実務の現場においては、5月も下旬にさしかかると気になってくるのは「労働保険年度更新」ではないでしょうか。令和2年度の労働保険年度更新では、いくつか前年と異なるポイントがあります。労働保険年度更新の手順と共に、今一度理解を深めておきましょう。

労働保険年度更新の目的

社会保険料(健康保険・厚生年金)は毎月納付するものですが、一方で労働保険料(労災保険・雇用保険は年に一度の「年度更新」によって申告・納付します。年度更新とは、

  • 既に納付済みの前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付
  • 新年度の概算保険料を納付するための申告・納付

に関わる手続きであり、令和2年度の年度更新では「令和元年4月1日~令和2年3月31日の労働保険料の清算」「令和2年4月1日~令和3年3月31日の労働保険料の概算納付」が行われます。

労働保険年度更新 令和2年度の変更点

令和2年度の労働保険年度更新では、前年までと異なる点がいくつかあります。

その1.特定の法人について電子申請が義務化

令和2年度の年度更新では、下記の法人で、電子申請が義務化されます。

  • 資本金、出資金又は銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人
  • 相互会社(保険業法)
  • 投資法人(投資信託及び投資法人に関する法律)
  • 特定目的会社(資産の流動化に関する法律)

参考:厚生労働省「令和2年4月から特定の法人について電子申請が義務化されます」

その2.高年齢労働者に係る雇用保険料の免除措置が終了

令和2年3月31日までは、一定の高年齢労働者に関する雇用保険料は免除されていましたが、令和2年4月1日からはこの措置が終了し、従来の免除対象高年齢労働者についても、他の雇用保険の被保険者と同様、雇用保険料の納付が必要となります。
これにより、令和2年度の年度更新では、

✔ 雇用保険確定保険料からは、「昭和30年4月1日以前に生まれた人(令和元年4月1日において満64歳以上の一般被保険者)」を算定基礎から除外

します。概算保険料では、高年齢労働者分も算定基礎に含めます。

参考:東京労働局「労働保険高年齢労働者に係る雇用保険料の免除措置終了のお知らせ」

その3.労働保険料等の申告・納付期限が令和2年8月31日まで延長

新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、労働保険料等の申告期限・納付期限(年度更新期間)について令和2年8月31日まで延長されます。

参考:厚生労働省「労働保険の年度更新期間の延長等について」

労働保険年度更新 やり方をわかりやすく

労働保険年度更新マニュアルは、5月下旬から送付される申告書に同封される他、厚生労働省のウェブサイトで閲覧可能となりますが、令和2年度は未だ公開されていません(令和2年5月18日現在)。現場において円滑に準備を進めるために、年度更新のやり方を改めて見直しておきましょう。

1.算定基礎賃金集計表を作成する

  1. 前年度に使用した全労働者(パート・アルバイトなどもすべて含む)の賃金台帳を用意する
  2. 役員等について労働者性の有無を確認する
    ⇒代表者や役員報酬のみが支払われている役員は対象外です。兼務役員については、役員報酬以外の労働者としての賃金部分のみ算定賃金に含めます
  3. 高年齢労働者、パートタイム労働者等の雇用保険の被保険者資格を確認する
    ⇒雇用保険の被保険者資格のない方でも、「労災保険・一般拠出金」の対象となるため、集計して、算定基礎賃金集計表の所定欄に記載します
  4. 雇用保険の免除対象高年齢労働者を確認する
    ⇒令和元年度の申告までは高年齢労働者(その保険年度の初日において満64歳以上の者)分の雇用保険料が免除されます。よって、令和元年度雇用保険確定保険料では、免除対象高年齢労働者の賃金を別途集計し、雇用保険法適用者分から差し引いた額を保険料算定対象者分として申告します。
    令和2年度雇用保険概算保険料では、高年齢労働者の賃金を区別する必要はありません。
  5. 労災保険と雇用保険それぞれの対象労働者の人数と賃金を集計する

2.申告書を作成する

  1. 「確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」で算出した確定保険料及び一般拠出金の算定基礎額を転記し、確定保険料と一般拠出金の額を計算する
  2. 概算保険料についても計算し、確定保険料額と昨年度申告した概算保険料額(申告済概算保険料額)との過不足を計算する

なお、「年度更新申告書計算支援ツール」を利用した場合には、画面上で作成した内容を申告書に転記します。ただし、支援ツールで作成した申告書の完成イメージを印刷して提出することはできませんのでご注意ください。

参考:厚生労働省「年度更新申告書計算支援ツール」

3.期間内に申告・納付する

令和2年度の申告・納付期限は、6月1日~8月31日です。提出先は労働局、労働基準監督署又は金融機関・郵便局等となります。

以上、3つの段階を経ることで、年度更新は完了します。詳細は、今後公開されるマニュアルにてご確認いただけます。

労働保険「年度更新」に向けて5月中に準備できること

御社では、年度更新に向けた準備を進めているでしょうか?「申告期限はまだ先だし」と考えていると、あっという間に6月がやってきます。5月中に、申告書を作成するところまでは進められるはずですので、今から取り組んでみましょう。

✓ 確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表の作成
令和元年4月1日から令和2年3月31日までに使用した全ての労働者に支払われた賃金総額を算出しておきましょう。この場合、令和2年3月31日までに支払いが確定しているが、実際の支払いは同年4月1日以降になる場合も含みます。

✓ 概算保険料の検討
併せて、令和2年4月1日から令和3年3月31日までに使用される全ての労働者に支払われる予定の賃金総額を検討しておきます。労災・雇用保険分の賃金総額の見込み額は、前年度と比較して1/2以上2倍以下の場合、前年度確定賃金総額と同額を概算賃金総額の見込み額とします。

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