改正労働者派遣法に対応できてますか?労働者派遣事業許可申請クリアのための3つのポイント

旧特定労働者派遣事業の届出をしている事業主は、改正法施行の3年後である平成30年9月29日までに労働者派遣事業許可申請をし、許可を得なければならないことをご存知でしょうか?今回はその「切り替え手続きの注意点」をまとめました。

法改正を受け、未だ混乱状が続く派遣業界

平成27年9月30日に改正労働者派遣法が施行されて以来、派遣業を営む企業では未だ混乱が続くケースが少なくありません。弊所においては、改正法施行3年後を前に、今、再び労働者派遣事業に関わるお問い合わせが急増中です。

「法律が改正されたことは知っているが、具体的にどう変わったのか?」
「結局のところ、派遣元は何をすれば良いのか?」

等、新ルール対応の社内体制作りに悩む事業主様は数多くいらっしゃいます。様々な相談の中でも特に多いのが、旧特定労働者派遣事業者からの切り替えに関するご依頼です。旧特定労働者派遣事業の届出をしている事業主は、改正法施行の3年後である平成30年9月29日までに労働者派遣事業許可申請をし、許可を得なければなりません。

労働者派遣事業許可申請クリアのための3つのポイントをご紹介します。

最重要課題は「要件を満たすこと」

特定からの切り替えであっても、基本的には通常の許可申請の手順を経る必要があります。まずは「所定の要件を満たすこと」が、申請に向けた第一歩です。大前提として、「欠格要件」に該当しないことを確認しましょう。

参照:厚生労働省
労働者派遣事業を適正に実施するために-許可・更新等手続マニュアル-」 欠格事由

欠格事由不該当を確認したら、いよいよ許可基準に関するチェックに進みます。

詳細に関してはマニュアルをご覧いただくとして、ここでは特筆すべき「財産的要件」「事業所的要件」「教育訓練に関する要件」を挙げました。ご覧いただくと分かる通り、労働者派遣に関わる許認可の変更に伴い、派遣業を営むためのハードルは従来と比べてぐんと高くなったと言えます。

財産的要件

・資産の総額から負債の総額を控除した金額(基準資産額)が、[2,000万円 × 派遣を行う事業所数]以上であること
・上記の基準資産額が、負債総額の7分の1以上であること
・現預金額が、[1,500万円 × 派遣を行う事業所数]以上であること

事務所的要件

・風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律で規制する風俗営業や性風俗特殊営業等が密集するなど事業の運営に好ましくない位置にないこと
・20㎡以上の広さの事業所を確保すること
・事業所内に研修や面談を行うスペースを設けること

教育訓練に関する要件

・派遣労働者のキャリア形成を念頭に置いた、段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画を定めること
・キャリア・コンサルティングの相談窓口を設置すること
・キャリア形成を念頭に置いた派遣先提供のための事務手引、マニュアル等を整備すること
・教育訓練の時期や一定の期間ごとに、有給かつ無償の教育訓練を用意すること

参照:厚生労働省
労働者派遣事業を適正に実施するために-許可・更新等手続マニュアル-」 許可基準

平成30年9月30日以降も引き続き労働者派遣事業を営むためには、原則として上記の要件を満たした上で申請し、期日までに許可を得る必要があります。ちなみに、申請から実際の許可が下りるまでには、通常3ヵ月程かかります。今後は、旧特定労働者派遣事業者からの許可申請の増加が予想されるため、さらに余裕を持って申請されることをお勧めします。

申請に関わる具体的な手順・添付書類等は、下記のマニュアルをご確認ください。

参照:厚生労働省
労働者派遣事業を適正に実施するために -許可・更新等手続マニュアル-

旧特定労働者派遣事業者には、「財産的要件の緩和」が認められています

これまで特定労働者派遣事業者として派遣業を営んできた小規模事業所にとって、このたび提示された「財産的要件」は容易にクリアできるものとは言えません。政府はこの点を考慮し、旧特定労働者派遣事業者を対象とした配慮措置の適用を認めています。

小規模派遣元事業主への暫定的配慮措置

・当面の間の暫定措置

1つの事業所のみを有し、常時雇用している派遣労働者が 10 人以下である中小企業事業主

⇒基準資産額 1,000 万円

⇒現預金額 800 万円

・平成30年9月29日の申請分まで

1つの事業所のみを有し、常時雇用している派遣労働者が5人以下である中小企業事業主

⇒基準資産額 500 万円

⇒現預金額 400 万円

参照 : 厚生労働省『「労働者派遣事業の許可基準の改正」の概要について

ちなみに、上記の配慮措置を利用して許可を得た場合でも、有効期限内に派遣労働者数が増加した場合には、この措置の対象から外れ、適切な形で資産要件を満たす必要が生じます。

また、旧特定労働者派遣事業者ではなく、これから新規に労働者派遣事業を開始する事業者に対してこの緩和措置への適用は認められませんので、ご注意ください。

まとめ_労働者派遣事業許可申請はお早めに

労働者派遣事業のルールが大きく変化し、未だ対応に追われる事業主様は少なくないと思います。「まだ時間はあるから・・・」と思っていると、あっという間に平成30年9月30日を迎えることになってしまいます。切り替えに伴う準備や申請には時間を要しますから、まだ手つかずの事業主様は早急に着手しましょう。ご不明な点、ご相談等がございましたら、お気軽に社会保険労務士にお問い合わせください。

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