2023年度税制改正に伴う、給与計算実務における変更点

2023年度税制改正に伴い、源泉所得税関連における改正が行われました。今号では、給与計算ご担当者様がおさえておくべき、給与明細等に関わる「電磁的方法により提供する際のみなし承諾」、扶養控除等申告書における「前年の申告内容から変更がない場合の記載省略」について解説します。

給与明細及び源泉徴収票の電子交付に係る「みなし承諾」(2023年4月1日以後に行う通知について適用)

会社が従業員に交付する必要がある「給与等の支払明細書」及び「給与所得の源泉徴収票」については、従業員本人に書面で交付する他、電磁的方法により提供(電子交付)できます。ただし、電子交付に際してはあらかじめ従業員に対し、承諾を得なければならないとされています。
この点、2023年度税制改正では、「会社が定める期限までに従業員からその承諾をしない旨の回答がないときは、その承諾があったものとみなす」旨を事前に通知した場合、その期限までに回答がなかったときは、その承諾を得たものとみなすことができるようになりました。2023年4月1日以後に行う通知について適用されます

給与明細等の電子交付に関わる事前承諾の手順

現状、給与明細等を電子交付している企業においては、従業員から事前承諾を得ているでしょうか?2023年度より、承認に係る回答がない場合についてみなし承認が認められることとなりましたが、従業員から承認を得るための企業側の手続きには原則として何ら変更はありません。今一度、電子交付に際し企業が行うべきことを確認しておきましょう。

承諾を得る際に用いる書式や必要記載事項等には、特に決まりがあるわけではありません。実務上、以下①~⑧の事項を労働者に対して電磁的方法もしくは書面により示し、「電子交付について承諾する旨、承諾日、受給者等の氏名」を記載してもらうことによって、承諾を得ることが考えられます。

① 電子交付する書類の名称(給与所得の源泉徴収票、給与等の支払明細書の別等)
② 電磁的方法の種類やその具体的な方法

  • 電子メールにより交付する場合・・・電子メールにより送信する旨、電子メールのアドレス等の記載
  • 社内LAN・WANやインターネット等を利用して閲覧に供する場合・・・給与所得の源泉徴収票等データを閲覧に供する旨、給与所得の源泉徴収票等データを掲載
    ホームページアドレスや閲覧方法等
  • 磁気媒体等により交付する場合・・・交付する媒体の種類等の記載

③ 受信者ファイルへの記録方法(XML形式、PDF形式、暗号化して受信者ファイルに記録する旨及びその復号化方法等)
④ 交付予定日(「毎年○月○日までに交付」、「給与支給日に交付」等)
⑤ 交付開始日
⑥ その他参考となる事項

「みなし承認」を採用する場合

なお、今号で解説する「みなし承認」を採用する場合、併せて以下についても通知します。
⑦ 承認に係る回答期限
※回答期限について法的な定めはありませんが、回答に必要な期間を十分に見積もる必要があります
⑧ 会社が定める期限までに従業員からその承諾をしない旨の回答がないときは、その承諾があったものとみなす旨の記載

参考:国税庁「給与所得の源泉徴収票等の電磁的方法による提供(電子交付)に係るQ&A

扶養控除等申告書に係る記載省略(2025年1月1日以降に支払いを受けるべき給与等について提出する申告書より適用)

企業では、毎年12月中旬までを目安に(新規採用者の場合は最初の給与を支払うとき)、翌年分の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を従業員から回収するケースがほとんどだと思います。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は税務処理を適正に行うために必要な書類となりますが、中身を見ると、申告内容に毎年変動がない例も少なくありません。この点、2023年度税制改正によって、申告書に記載すべき事項について前年の申告内容から異動がない場合、記載すべき事項の記載に代えて、「異動がない」旨の記載によることができることとされました
本改正は、2025年1月1日以後に支払を受けるべき給与等について提出する申告書について適用します。

参考:国税庁「源泉所得税の改正のあらまし 令和5年4月

今号では、給与計算実務に直接関わりのある法改正事項を解説しました。確実に内容を理解し、実務に活かしてまいりましょう。

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