他社はどうしてる?懲戒処分の適用実態

人事労務の実務においては、従業員の問題行動により懲戒処分を検討せざるを得ないケースが生じるもの。このような場合、就業規則に定める懲戒規定に則って処分を考えていくことになりますが、規定はあくまでざっくりとした判断基準にとどまることが大半である上に、いざ処分を適用するとなればその妥当性に頭を悩ませるケースは多々あります。

企業における懲戒制度の実態を知る

懲戒制度について、他社ではどのような運用をしているのでしょうか?このあたりの実態は通常、なかなか知る術がありませんが、このほど一般財団法人労務行政研究所では、各企業の懲戒制度の内容やケース別に見た懲戒処分の適用判断などを調査し、225社の集計結果を取りまとめました。さっそく内容を確認しましょう。

懲戒段階の設定状況と懲戒処分の種類

「懲戒」というと、一般的に真っ先にイメージされるのは「懲戒解雇」ですが、実際にはいくつかの種類に区別されています。就業規則等をご確認いただくと、どのような段階があるのかが明記されていると思います。
懲戒の種類は、企業ごとに異なります。懲戒段階の設定として、今回の調査で最も多かったのは「6段階」(41.8%)、次いで「7段階」(28.4%)、「5段階」(15.6%)と続きます。また、懲戒処分の種類としては「懲戒解雇」がすべての回答企業で設定されており、「譴責」「減給」「出勤停止」は9割以上の企業で設定されていることが分かります。併せて、特定の非違行為に対して厳重注意を言い渡すのみの「戒告」ではなく厳重注意に加え始末書の提出を求める「譴責」を採用する傾向にあること、昇給停止処分については多く実施されていないことが特徴的です。

懲戒解雇とされる割合が高い問題行動

数ある懲戒処分の中でも、懲戒解雇は最も重い制裁であり、重大な職場規律違反・企業秩序違反が発覚した際に適用されます。会社としては解雇権の乱用に該当しないよう、正しく状況を把握し、適切な手続きに則って実施しなければなりません。
他社ではどのようなケースで懲戒解雇を適用しているのでしょうか。今回の調査では、回答が多かった順に「売上金100万円を使い込んだ」(75.9%)、「無断欠勤が2週間に及んだ」(74.1%)、「社外秘の重要機密事項を意図的に漏えいさせた」(69.4%)となっています。
同調査結果では、これらの他にも「30のケース別に見た被懲戒者に対する懲戒処分」を紹介していますので、参考URLよりご確認ください。それぞれの行為について一般的にどのような処分が適用されているのか、実務上参考になる部分も多いのではないかと思います。ご参考までに、テレワークに係る労務管理でよく問題になりがちな行為について、懲戒処分の取扱いをご紹介しておきましょう。初動としては「戒告・譴責」(厳重注意及び始末書提出)での対応が主となり、頻度や悪質性等に鑑み「減給」「出勤停止」等の重い処分に切り替えられているようです。

解雇における退職金の支給状況

懲戒処分によって解雇されたとなると、退職金は支払われないものというイメージがありますが、実際のところは一律で不支給とされているわけではありません。調査によると、懲戒解雇(使用者が一方的に労働契約を解消する処分)では退職金を「全く支給しない」が63.2%、諭旨解雇(退職願等の提出を勧告し、退職を求める
処分で、諭旨退職・依願退職ともいう)では退職金を「全額支給する」が30.5%で最多となっています。もっとも、退職金は「労働者の永年の勤続の功」に対する支給という側面がありますから、問題行動がこれまでの功績を抹消してしまう程度と言えるかどうかが焦点となるでしょう。

適正な懲戒処分の実施のために、今一度、就業規則の見直しを

懲戒処分の適用にあたっては、個別の事例について合理性・相当性の十分な検討が不可欠であることはさることながら、根拠条文となる就業規則の定めについても重要となります。御社の就業規則には、そもそも懲戒規定が盛り込まれているでしょうか?懲戒処分の種類と程度に関する事項が定められているでしょうか?就業規則が、従業員に周知されているでしょうか?細かく確認していくと、就業規則上の未対応が発覚するケースは珍しくありません。
懲戒規定を含む就業規則チェックは、労務管理の専門家である社会保険労務士までご相談ください!

参考:一般財団法人労務行政研究所「懲戒制度に関する実態調査

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