採用選考における応募者のSNSチェック!法的な問題は?

InstagramやTwitter等のSNS活用は、もはや性別や世代を問わず、ごく当たり前のものになってきています。このような背景で今、増えているのが、企業による「SNSチェック」。人事担当者が採用選考において応募者のSNSをチェックし、面接では分からない応募者の素顔や素行を確認する例が増えているようです。今号では、こうした風潮を受けて弊事務所に時おり寄せられる「SNSチェックは法的に問題ないものなのか」といったご質問にお答えすることにしましょう。

インターネット上で公表される公知の情報にも、個人情報保護法が適用

結論から申しますと、企業側がインターネット上に公開されている応募者のSNSを閲覧すること自体には、法的に問題ありません。ただし、個人情報を「取得」する場合のルールや、求職者の個人情報に係る「収集禁止情報」に留意しなければなりません

「閲覧」は問題なし。「取得」には利用目的の通知・公表が必要

まず忘れてはならないのが、インターネット上で閲覧可能な公知の情報であっても、個人情報保護法上、保護されるべき対象とされていることです。よって、閲覧するにとどまらず、「当該情報を転記の上で検索可能な状態にした」「当該情報が含まれるファイルをダウンロードしてデータベース化した」「検索可能化・データベース化までせずにローカルPCのワードファイルに転記等した」等、「個人情報を取得した」と解される場合には、企業は取得にあたり利用目的の通知・公表に対応しなければなりません。

参考:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)

採用活動上、求職者に対して「原則収集が認められない個人情報」の明示あり

加えて、求職者の個人情報については、職業安定法上「業務(つまり求人・採用)の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない」と規定されています。これを踏まえ、厚生労働省は公正な採用選考の妨げとなるような、社会的差別の原因となるおそれのある以下に関わる個人情報の収集は、原則として認められないとしています(本人の同意があれば可能)

■ 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
→家族の職業、収入、本人の資産等の情報、及び容姿、スリーサイズ等差別的評価につながる情報
■ 思想及び信条
→人生観、生活信条、支持政党、購読新聞・雑誌、愛読書
■ 労働組合への加入状況
→労働運動、学生運動、消費者運動その他社会運動に関する情報

参考:厚生労働省「公正な採用選考の基本

今一度考えたい、SNSチェックに関わる会社の方針

ここまでのお話しを踏まえると、採用選考段階でのSNSチェックは直ちに法的問題が生じるものではありませんが、実施するとなれば原則として「応募者の同意」が必要となってくるでしょう。もっとも、応募者が同意した上でSNSチェックを行ったとしても、応募者側は事前に都合の悪い情報やアカウント自体を削除しているでしょうから、会社側が知りたい情報を得られることはないと思います。

単に「閲覧のみ」で実施しようという場合にも、SNSの投稿内容をどう判断するかは難しい問題です。加えて、意図せず前述の「原則収集が認められない個人情報」に触れてしまう可能性もあり、公正な採用選考の妨げとなることが考えられます。また、同姓同名の人物と応募者との取り違えにも、細心の注意が必要です。SNSチェックを行う企業に対しては、厚生労働省の方針に鑑み「適正範囲内での情報収集に努めること」、さらに採用担当者には、応募者のSNS上の姿と選考過程での人となりを総合的に判断する「公正な目」が求められることは言うまでもありません。

個人的には、採用選考段階における応募者のSNSチェックは行わず、その分、現場においては面接など一つひとつの選考の精度を高めていくことが課題となるかと考えています。御社では、どのようにお考えでしょうか?会社として明確なルールがない場合、担当者の独断でモラルに反した情報収集が行われているかもしれません。今一度、会社としての方針を示されることをお勧めします。

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