休日出勤した場合の振替休日を半日ずつ取得させることはできるのか?

先日、顧問先より、「本来シフトに入っていない日に従業員を出勤させたが、その分の振替休日を半日ずつ、2日に分けて取得させることに問題ないか?」とのご相談を受けました。休日出勤分の振替休日を半日に分けることは、現場においては業務都合を考慮した柔軟な対応のように思われますが、法的な問題はないのでしょうか?このページでは労働基準法の観点から解説することにしましょう。

原則として、半日単位での振替休日の付与は認められません

「休日の振替」とは、就業規則やシフト表等であらかじめ休日と定められていた日を労働日とし、そのかわりに他の労働日を休日とすることを言います。休日を振り替えることで、元々休日と定められた日が「労働日」となり、そのかわりとして振り替えられた日が「休日」となり、休日労働に対する割増賃金の支払義務は発生しないことになります。
冒頭の例は、「1日分の休日労働を、半日×2回に分けて休暇を取得させて振り返ることが可能なのか」というご相談です。

半日単位での振替休日が認められない理由

結論からいえば、半日単位での振替休日の付与は原則として認められません。その理由を理解するためには、労働基準法上、使用者が労働者に対して与えるべき「休日」の考え方に目を向ける必要があります。

労働基準法の定めでは、使用者は労働者に対して毎週少なくとも1日、例外的に4週を通じて4日以上の休日を与えることとしています。ここでいう「休日」とは暦日休日制をとっており、必ず午前0時を起算とする暦日24時間を含む必要があります。単に勤務日と勤務日の間に24時間以上の勤務しない時間があるというだけでは「休日」の要件を満たしませんし、半日休を2回に分けて付与して1日分の休日を取得させたことにもなりません。

「所定休日」についてなら半日単位での振替休日の付与は可能

ただし、前項の「休日」や休日労働に係る振替休日の考え方は、労働基準法上最低限与えなければならない休日、つまり「法定休日」について適用するものです。一方で、法定を上回る休日、つまり「法定外休日」「所定休日」の労働については、振替休日を半日ずつ2回に分けて取得させることに何ら問題はないとされています。

ただし、一般的に想定される「休日」の趣旨に鑑みれば、使用者側が労働者に対し一方的にこのような取扱いを強いることは適切ではありません。そもそも休日の振替は労働者側にとって労働契約上の不利益変更となりますから、前提として就業規則や労働契約等に振替規定を設けた上で、都度労働者の合意の元に休日の振替が行われる必要があります。

振替休日の指定は、「週40時間」の枠組みに留意すべし

休日の振替は、なるべく出勤日と振替休日が同じ週になるように調整するようにしましょう。振替休日が週をまたぎ、出勤が発生した週の労働時間が週40時間超となると、時間外労働扱いとなり割増賃金の支払義務が生じます。よって、暦日24時間以上の休日(法定休日)を週1回確保した上で、週の労働時間を40時間とするために、1日8時間の労働日を週4日、1日4時間の半日労働日を週2日として、週の労働時間の合計を「8時間×4日+4時間×2日=40時間」とできるのが理想的です。

代休であれば半日単位付与に制限なし

ここでは、振替休日に関わる半日単位付与の考え方について解説しました。休日の振替は、原則として、事前に労働契約上特定されている休日と労働日を入れ替えることで、労働基準法上の「法定休日」を確保する制度です。事前に法定休日と労働日を振り替えるため、割増賃金が生じることもありません。また、法定休日を確保した上で付与される法定外休日、所定休日の振替に関しては、厳密な暦日休日制をとらずに半日を2回に分けて振り替える等の柔軟な対応が認められます。

ちなみに、振替休日と類似した制度に「代休」があります。代休とは、休日労働が行われた場合に、その代償として以後の特定の労働日を休みとするものです。この場合、法定休日が確保されたことにはならないため、休日労働分に対する割増賃金の支払いが必要です。法定休日の要件とされる暦日休日制を考慮しなくても良いため、半日単位の休暇付与は制限されません。ただし、事後的な休日振替である代休を適用する場合にも、事前の休日振替と同様に就業規則や労働契約等に代休規定を設ける、労働者に個別の同意を得るといった手順を経る必要があります。

まとめ_労働基準法上の休日の趣旨や、振替休日と代休の制度の違いを正しく理解した上で、適切に対応しましょう

以上、タイトルに掲げた「休日出勤した場合の振替休日を半日ずつ取得させることはできるのか?」のご相談への回答は、以下の通りとなります。労働基準法上の休日の趣旨や、振替休日と代休の制度の違いを正しく理解した上で、適切に対応できるようにしましょう。

  • 出勤した休日が法定休日の場合、半日単位取得は認められない
  • 出勤した休日が法定外休日、所定休日であれば規定に則って半日単位の取得が可能
  • 代休扱いであれば規定に則って半日単位の取得が可能
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