フリーランスに業務委託する発注事業者必見!「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」

今般の働き方改革では、個々のライフスタイルに応じた多様な活躍の実現が目指され、その中で「フリーランス」という働き方を選択する方が増えています。雇用関係によらないフリーランスの活用は、企業にとってメリットが期待できる反面、実際に取引をする上では雇用関係とは違った取扱に留意する必要があります

発注事業者側が心得るべき「優越的地位の濫用の禁止」

2020年7月17日に閣議決定された「成長戦略実行計画」において盛り込まれた「事業者とフリーランスとの取引に係る環境整備の必要性」に関連し、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の連名で「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」が2021年3月26日に策定されました。ガイドラインには、フリーランスと取引する上で企業が注意すべき点が分かりやすくまとめられています。

独占禁止法・下請法上、留意すべき2つのポイント

発注事業者が遵守すべきは「優越的地位の濫用の禁止」「発注時の取引条件の明確化」です。仕事を与える側の企業と仕事をもらう側のフリーランスでは、その特性上、どうしても対等な関係が築かれにくいといった側面があります。しかしながら、優越的地位にある事業者が、その地位を利用して、フリーランスに対し不当な扱いをすることは独占禁止法・下請法上問題です。併せて、発注事業者が、発注時に取引条件を明確にする書面を交付しないことは、原則、独占禁止法上不適切な取扱いとなります

「優越的地位の濫用」に該当しうる問題行為11類型

「優越的地位の濫用」については様々なケースが想定されますが、ガイドラインでは問題となり得る行為の11類型が紹介されています。ここでは、ざっくり一覧のみ掲載しますが、ガイドライン全文には一つひとつの類型について具体的な想定例が記載されているので、参考にしてみてください。

「フリーランス」と「労働者」を正しく区別する

これまで解説した通り、独占禁止法や下請法の観点からフリーランスに対し不適切な取扱いをすることは問題となりますが、この他にも、「労働者性」の観点からも適切な区別が求められます。もしも、フリーランスが労働基準法上の労働者に該当する場合、雇用関係になくても、労働関係法令が適用されますのでご注意ください。

労働基準法上の労働者とは?

「労働者」の定義は、それぞれの法律によって少しずつ異なります。以下の判断基準から労働基準法上の労働者とされると、雇用関係にないフリーランスであっても労働時間や賃金などに関するルールの他、労働安全衛生法、労働契約法等の個別的労働関係法令の適用を受けられます

✓ 使用従属性
 ・「指揮監督下の労働」であること
 ・業務遂行上の指揮監督を受けていること(代替性がない)
 ・拘束性があること
✓ 報酬の労務対償性

原則として、「使用従属性」「報酬の労務対償性」が強いと判断される場合、労基法上の労働者性を満たすこととなります。
一方、フリーランスの労働者性を否定する要素として、「事業者性がある」「報酬額が著しく高額である」「特定の発注者等への専属性がない」等が挙げられます。

労働組合法上の労働者とは?

また、労働組合法上の労働者性が認められる場合、団体交渉等について保護(正当な理由のない団体交渉拒否等の不当労働行為の禁止等)を受けることができます。労働組合法上の労働者性の判断基準には、以下のものが挙げられます。

○ 基本的判断要素
✓ 事業組織への組み入れ
✓ 契約内容の一方的・定型的決定
✓ 報酬の労務対価性

○補充的判断要素
✓ 業務の依頼に応ずべき関係
✓ 広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束

一方で、「顕著な事業者性」が認められる場合には労働者性が否定される要素となります。


以上、全ての図の出典:厚生労働省「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン 概要版(パンフレット)

以上、独占禁止法・下請法と労働関係法令の観点から、フリーランスには適切な取扱いが求められます。取引上留意すべき点を踏まえた上で、フリーランスを上手く活用し、御社の業務効率化、働き方改革を推進してまいりましょう!

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