【社会保険】2022年10月から進む「短時間労働者への適用拡大」|企業規模要件は段階的に「従業員数51人以上」まで引き下げ

パートやアルバイトの健康保険・厚生年金加入については、かねてより議論されてきたテーマであり、2016年10月以降は大企業の短時間労働者に係る適用拡大が法律上の義務となっています。このたびの年金制度改正法が成立し、従業員数500人以下の民間企業についても幅広く、法律上の義務として適用が拡大されることになりました。現状、概ね従業員数50名前後の企業には、影響が及ぶ可能性があります。

短時間労働者への社会保険適用拡大 企業規模要件の引き下げは「100名超」「50名超」の2段階

2020年5月29日に可決・成立した「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案」により、パートやアルバイトでも要件を満たす場合、幅広く社会保険の被保険者となります。
要件には「企業規模に係る要件」と「労働者に係る要件」の2種類があります。まずは「企業規模要件」について確認しましょう。

■ 2016年10月~ 従業員数500人超規模
※2017年4月~ 従業員数500人以下の企業では、500人以下の民間企業は、労使合意に基づき、短時間労働者への社会保険適用拡大が可能となっています
■ 2022年10月~ 従業員数100人超規模
■ 2024年10月~ 従業員数 50人超規模

「従業員数」とは?

企業規模要件を判断する際の「従業員数」は、労災保険のように、雇用する全ての労働者をカウントするわけではありません。ここでは、「適用拡大以前の通常の被保険者」、具体的には「フルタイム勤務の労働者」「週の所定労働時間および月の所定労働日数が、フルタイム勤務の労働者の4分の3以上である短時間労働者」のみを指します。そもそも社会保険の被保険者とはならない短時間労働者(週の所定労働時間および月の所定労働日数が、フルタイム労働者の4分の3未満の者)は数に含めません。

「従業員数」判断のタイミング

現状、従業員数が要件となる数の前後である場合、「いつの段階の従業員数で企業規模を判断すべきか」が問題になってくると思います。この点、「直近12ヵ月のうち6ヵ月で基準を上回った段階」で適用対象とされることを把握しておきましょう。また、ひとたび適用対象となれば、その後に従業員数の基準を下回ることとなったとしても、原則として適用対象のままとなります

新たに社会保険被保険者となる「短時間労働者」の定義とは?

社会保険被保険者となる短時間労働者の「労働者要件」は、下記の3項目です。

✓ 週の所定労働時間が20時間以上あること
✓ 賃金の月額が8.8万円以上であること
✓ 学生でないこと

「週の所定労働時間」は、原則として契約上の労働時間で判断しますが、実務上は実態も重視されています。
現行では、契約上の労働時間が週20時間未満であったとしても、実労働時間が2ヵ月連続で週20時間以上となり、なお引き続くと見込まれる場合には、3ヵ月目から保険加入となっています。

「勤務期間要件」は撤廃に

なお、従業員数500人超規模企業の短時間労働者への保険適用に際しては、「勤務期間要件」として1年以上の雇用見込が挙げられていますが、このたびの法改正により撤廃されます。短時間労働者についても、フルタイム等の被保険者と同様、「2ヵ月超の雇用見込があること」の要件が適用されることになります。

雇用契約が「2ヵ月以内」でも、実態として2ヵ月を超えるなら遡及適用に

なお、2022年10月より「雇用契約期間が2ヵ月以内であっても、実態としてその雇用契約の期間を超えて使用される見込みがあると判断できる場合は、最初の雇用期間を含めて、当初から被用者保険の適用対象とする」旨が今回の法改正項目に盛り込まれています。

具体的には、雇用期間が2ヵ月以内でも、以下のいずれかに該当する場合は、社会保険の遡及適用を受けます。

(ア)就業規則、雇用契約書等において、その契約が「更新される旨」、または「更新される場合がある旨」が明示されている場合
(イ)同一の事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が更新等により最初の雇用契約の期間を超えて雇用された実績がある場合

ただし、上記のいずれかに該当するときであっても、労使双方により、最初の雇用契約の期間を超えて雇用しないことにつき合意しているときは、雇用契約の期間を超えることが見込まれないこととして取り扱われるようです。この点、新たに社会保険適用を受けることとなる短時間労働者の要件のひとつ「週の所定労働時間が20時間以上あること」に関して、実労働時間が2ヵ月連続で週20時間以上となり、なお引き続くと見込まれる場合には、同様に遡及適用の扱いとなる可能性が高いと言えます。

短時間労働者への社会保険適用拡大を目前に、現場においては保険料に係る企業負担の想定、そして雇用計画の見直しを進めましょう。また、社会保険加入の義務化は会社側だけでなく、労働者側にも大きな影響を与えます。適用拡大の対象となりそうなパート・アルバイトとは、早期に、今後の雇用契約について話し合っておかれると安心です。

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