コロナ禍に幅広く導入が進んだテレワークですが、柔軟な働き方の導入は多くの現場で一時的なものに止まり、5類移行後に再び出勤へと切り替わっている現状があります。企業において、テレワークという働き方を標準的なものとして定着させることには、まだまだ多くの課題があるようです。しかしながら、出社を必須としない柔軟な働き方の実現は多様な人材の活用を可能とし、深刻化する人手不足解消のカギともなり得ます。テレワークの本格導入に目を向けるべく、現場における不安要素や疑問の解消に努めましょう!
目次
まずは「知る」ことから!中小企業のテレワーク普及・促進・定着に向けて
一般社団法人日本テレワーク協会が公開する「テレワークに関するQ&A集」では、テレワークのメリット・デメリット、労務管理、ITセキュリティ、人事評価やコミュニケーション等、テレワークについて多岐に渡る観点から解説されています。「これからテレワークを導入したい」という企業においては、何かと参考になるはずです。
参考:一般社団法人日本テレワーク協会「テレワークに関するQ&A集」
労働時間把握のために検討したい「ルール作り」と「ツール導入」
テレワーク導入に際しての懸念事項として、弊事務所に寄せられるご質問のうち特に多いのが「労働時間をどのように把握するか」。事業所の外での就業を認めることにより、当然のことながら、会社は勤務中の従業員の姿を確認することができなくなります。労務管理上、「就業時間内にちゃんと業務に従事しているか」という疑念の他、「意図せず長時間労働化していないか」等の不安要素もついて回り、これらを払拭するためには出社勤務時同様、従業員の働き方や労働時間の適正把握が不可欠といえます。
この点、Q&Aでは以下の提案がされています。
①始業・終業時刻の管理
始業・終業時刻の報告や記録の方法をあらかじめ決めておく。
報告ツールの例としては以下の通り。
・Eメールやチャット
・電話
・勤怠管理ツール
②業務時間中の在席確認
・Eメールやチャットの定期的なやりとり
・在席管理ツールの使用
一番簡単な方法は日々の仕事内容を報告してもらい、業務量と優先順位が適切かを確認すること。
・出勤時:その日に行う業務内容を上長やリーダーに報告する
・退勤時:それらの業務内容の進捗を上長やリーダーに報告する
場合によっては、無理に管理しようとせず、プロセス管理から結果管理に移行していくことも有効
長時間労働の確認では上記で報告されている業務量が適切かの判断に加え、打刻データやPCのログイン
履歴から実際の労働時間の把握を行うと良いでしょう。
また、ツールで解消できる部分もあります。
⇒JC360
PCの稼働状況だけでなく、操作履歴やマウス、キーボードの操作時間などを用いて労働時間を把握することが出来ます。ログ情報という客観的なデータを用いる為、信頼性の高い情報を取得することが出来ます。
テレワーク実施に伴う金銭的負担問題は、「手当」の導入で解消
自宅で業務を行わせる上では、光熱費、電話代、通信費等の費用負担が問題となることがあります。これらは仕事とプライベートとの切り離しが難しい支出のため、対応に頭を悩ませることも多いと思います。
この点、Q&A集では以下の通り解説があります。
国税「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」
企業におけるテレワーク実施率は低下傾向も、労働者側のニーズは高まる一方。御社の方針は?
株式会社パーソル総合研究所の調査によると、2023年7月13日~7月18日における正社員のテレワーク実施率は全国平均で22.2%となり、2020年4月以降で最も低かったことが分かっています。企業におけるテレワーク実施率が低下の一途をたどる傍らで、正社員のテレワーク継続意向は過去最高の81.9%とのことで、労働者側の高い需要が伺えます。現状、テレワーク未導入もしくは導入していても出社勤務に戻そうと検討されている現場においては、今一度、テレワークの導入・定着に向けた取り組みに目を向けてはいかがでしょうか。人手不足時代にも選ばれる企業であるために、労働者に多様な働き方を提示できる体制を整えるのが得策です。テレワーク導入準備と労務管理は、社会保険労務士へご相談ください。