「テレワーク」という働き方がごく一般的なものになりつつある一方で、未だ会社外での就業に伴う労務管理への対応は十分とは言えない現状があります。このたび公開された政府のテレワークガイドラインを元に、今一度、御社の社内ルールの再確認・整備に取り組まれてみてはいかがでしょうか?
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テレワークを「制度化」していますか?
IEYASUユーザーの事業所においても、在宅勤務やサテライトオフィス勤務等の柔軟な働き方を採用している例をよく見かけます。クラウドによる勤怠管理は、テレワーク制度と同時に導入されることが少なくないようです。
ところで、御社ではテレワークという働き方を就業規則等に定め、制度化した上で導入しているでしょうか?実態としては、未だ“ごく一部の人にだけ例外的に認めている働き方”といった会社も多く、正式に制度化されていないケースは珍しくなさそうです。確かに、テレワークを認めるべき労働者、業務というのは通常、必然的に限定されるものです。しかしながら、その旨を明文化し周知していないことで、従業員間の不公平感を煽ることにもなりかねません。たとえ現状、テレワーカーが一人であったとしても、制度として正式に規定しておくことで、すべての従業員の合意の下、適切な人材が堂々とテレワークできるように会社側が配慮する必要があります。
どの企業も頭を悩ませている「テレワーク時の適正な労働時間管理」
働き方改革実行計画を受け、政府では平成30年2月22日に「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン(以下、「テレワークガイドライン」という)」が策定され、公開されました。
参考:厚生労働省「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」
出典:厚生労働省「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン<概要>」
ガイドラインの中心は、「労働時間の適正管理」に関わる事項となっており、通常の労働時間制度との比較から、テレワーク時にはどのように対応するのが適切かが示されています。
ポイントを抜粋し、下記に挙げておきます。
✓ 労働時間の管理方法について
労働時間を記録する原則的な方法として、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録によるものとする(自己申告はやむを得ない場合のみ)
✓ 中抜け時間について
使用者が業務の指示をしないこととし、労働者が労働から離れ、自由に利用することが保障されている場合には、その開始と終了の時間を報告させる等により、休憩時間として扱い、労働者のニーズに応じ、始業時刻を繰り上げる、又は終業時刻を繰り下げることや、その時間を休憩時間ではなく時間単位の年次有給休暇として取り扱うことが考えられる
✓ 各種労働時間制の適用について
原則、労基法に定めのある労働時間制をテレワーク時に適用することは可能であるが、適正導入・運用が大原則
・事業場外みなし労働時間制
使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難なときにのみ適用される
・裁量労働制
裁量労働制の要件を満たし、制度の対象となる労働者についても、テレワークを行うことが可能
・フレックスタイム制
フレックスタイム制は、あくまで始業及び終業の時刻を労 働者の決定に委ねる制度であるため、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に基づき、使用者は各労働者の労働時間の把握を適切に行わなければならない
✓ 休憩時間について
原則として休憩時間を労働者に一斉に付与することを規定しているが、テレワークを行う労働者について、労使協定により、一斉付与の原則を適用除外とすることが可能
出典:厚生労働省「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」
テレワーク導入に伴い、まず検討すべきは「労働時間の管理方法」です。離れた場所でも正しく就労時間の実態を把握するためには、多くの場合、新たなシステムの導入が必須となるでしょう。
その他、ガイドラインには労働安全衛生法上の健康管理、適正な業績評価や社内教育の適用等についても、会社責任として検討すべき旨が明記されています。会社として、このあたりへの対応も不可欠です。
「テレワーカーの長時間労働」は会社の責任です
テレワークを制度として導入していても、実態をみると、労働時間の管理はアバウトになりがちであることが分かります。在宅勤務の場合、仕事とプライベートの切り分けがどうしても難しくなりますから、意図せず労働の長時間化が生じることは珍しくありません。
「テレワークに伴う長時間労働」への会社の対応として、本ガイドラインでは下記の通り示されています。
①メール送付の抑制
②システムへのアクセス制限
③テレワークを行う際の時間外・休日・深夜労働の原則禁止等
④長時間労働等を行う者への注意喚起
各項目の詳細は、ガイドラインをご一読ください。
長時間労働は、未払い残業代等の労使トラブルの火種となる他、労働者の健康をむしばむ要因ともなり得ます。万が一のときには、「従業員が勝手にやっていたこと」「会社は何も知らなかった」では済まされません。労働時間の管理を従業員任せにするのではなく、会社の責任としてできることを積極的に検討していきましょう。