職場にまん延する「静かな退職」とは?適切な企業対応を知る

少子高齢化に伴う働き手不足の深刻化に伴い、従業員各人に対し、より一層のパフォーマンスが求められる場面は多く想定されます。一方で、昨今、従業員の「静かな退職」に悩む企業が増加傾向にあるようです。今号では、「静かな退職」の定義と現場における実情、必要な企業対応を確認しましょう。

「静かな退職」とは?「働くこと」への意識の多様化を背景に、職場にまん延する働き方

「静かな退職」とは、仕事に対してキャリアややりがいを求めることなく、必要最低限の業務だけを淡々とこなす働き方を指します。実際に従業員が辞めてしまうことではなく、また、職場や業務を放棄することでもありません。2022年にアメリカのキャリアコーチが提唱した「Quiet Quitting」という言葉に端を発しているということから、日本のみならず、世界中で増加傾向にある「働く人の意識」の一種であることが分かります。

「静かな退職」は20代から50代まで、幅広い世代に見受けられる

「静かな退職」の実態に関してはこれまでにあらゆる媒体で調査され、様々な結果が出ていますが、これらを通して分かるのは「特定の世代に集中するものではなく、年齢を問わず働く人の多くに見られる傾向である」ということです。ここでは、マイナビキャリアリサーチLab「正社員の静かな退職に関する調査2025年(2024年実績)」より、『【年代別】「静かな退職」をしている割合』を抜粋します。

いずれの年代においても、働く人の半数ほどに、自身が「静かな退職」をしている認識があることが分かります。同調査では、約6割の人が「静かな退職」で得られたものがあると回答していること、さらに「今後も静かな退職を続けたい」割合は7割以上にも上ることが明らかになっています。「静かな退職」で得られたものとしては、「休日や労働時間、自分の時間への満足感(23.0%)」が最多で、次いで「仕事量に対する給与額への満足感(13.3%)」となっています。

「静かな退職」のきっかけにはパターンあり

同調査で特に興味深いのは、働く人が「静かな退職」をするようになった背景に関わる結果で、概ね以下の4つのパターンに分類できるようです。

「静かな退職」は、「働くこと」に対する個人の価値観・考え方が影響することもあり、この場合には外からのアプローチは難しいかもしれません。企業として対応を検討する際には、「不一致タイプ」「評価不満タイプ」「損得重視タイプ」へのアプローチに目を向けると良いかもしれません。

出典:マイナビキャリアリサーチLab「正社員の静かな退職に関する調査2025年(2024年実績)

5社中1社には、「静かな退職」状態の社員がいる

「静かな退職」の典型的な行動例として挙げられるのは、「あくまで与えられた業務のみこなし、自発的な提案や改善活動はしない」「必要な情報収集を自分でやろうとしない等、主体的な業務への関わりが見られない」「指示しないと動かない」「チャットやメール等への返信が遅い」「スケジュールに予定が何も入っていない」等です。貴社において、「静かな退職」をしている従業員がどの程度思い浮かぶでしょうか?エン・ジャパン株式会社による『「静かな退職」に関する調査レポート』によると、「5社に1社が「静かな退職」状態の社員がいる」と回答し、さらに300名以上の企業は90%以上が「いる」もしくは「いる可能性がある」と回答しているとのことで、いずれの企業においても「一定数いるもの」として考える必要がありそうです。

参考:エン・ジャパン株式会社「「静かな退職」に関する調査レポート

従業員とのコミュニケーションから実態を把握し、「静かな退職」への適切な対応を

もっとも、「静かな退職」では、従業員は最低限自分のやるべきことはこなします。仕事に対する個人の考え方を一方的に否定することはできませんし、ましてや「主体的な姿勢が見られない」「必要最低限しか働かない」等の理由のみで処罰の対象にすることなどもってのほかです。しかしながら、「静かな退職」の蔓延には、生産性の低下、イノベーションの阻害、他の従業員への業務負荷の偏り、職場全体の士気低下、優秀な人材の離職加速といったリスクがついて回ります。よって、企業として適切な対応が求められます。
企業における「静かな退職」への対応を考える際には、まず実態を把握することが肝心です。従業員の本音を引き出すために上司と部下の定期的な1on1ミーティングを実施し、対話を通して、現状の不安や悩み、キャリアの希望等の従業員の率直な意見に触れる機会を作ることが有効です。前述の「不一致タイプ」「評価不満タイプ」「損得重視タイプ」から、貴社における対応の優先度を検討し、具体的な取り組みを考えていくと良いでしょう。部署間や従業員間の業務の平準化、人事評価制度・給与制度の見直し、多様な働き方の導入、リスキリング・自己啓発の奨励等、各現場の実態に応じてあらゆる対応が考えられます。自社での「静かな退職」対応が難しい場合には、社内の制度構築に精通する社会保険労務士へお気軽にご相談ください。

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