2026年4月「在職老齢年金制度改正」|支給停止基準額が「65万円」に変更

立春を迎え、少しずつ春が近づいてくると、気になってくるのが「新年度からの制度改正」ではないでしょうか。今号では、2026年4月から変わることとして「在職老齢年金制度の改正」について解説します。支給停止基準額が「65万円」に変更され、働くシニア世代の活躍がますます後押しされることになりそうです。

そもそも「在職老齢年金制度」とは?

在職老齢年金制度とは、老齢厚生年金の受給者が厚生年金保険の被保険者である場合、受給されている老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額が一定の基準を超えたとき、年金額の一部または全部が支給停止される制度です。なお、2007年4月以降に70歳に達し、70歳以降も厚生年金適用事業所に勤務している場合、その方は厚生年金保険の被保険者とはなりませんが、在職による支給停止が行われます。在職老齢年金制度は、年金を受給しながら働く高齢者について、一定額以上の報酬のあるならば年金制度を支える側に回るべきとの考え方に基づいたものです。

「在職老齢年金制度」の見直し内容と背景

今回の在職老齢年金制度の見直しでは、年金の「支給停止基準額」が変更されます。現行制度では、賃金と厚生年金の合計が月「51万円」を超えると、超えた分の半額が支給停止となります。この点、2026年4月以降は、働く方の年金が減額になる基準額が「65万円」へ大幅に引き上げられ、働く高齢者の収入増加と年金受給の両立支援が図られることとなります。以下の例では、従来、一部支給停止されていた老齢厚生年金が、全額受給できるようになります。

出典:厚生労働省チラシ「働きながら年金を受給する皆さま 在職老齢年金制度が改正されます

在職老齢年金制度見直しの背景に、「少子高齢化」の影響

このたびの在職老齢年金制度見直しの背景には、日本における高齢化、そして少子化に伴う働き手不足が関係することは言うまでもありません。
内閣府の「高齢社会白書」(令和7年版)によると、日本の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は2024年に29.3%となり、今後2070年には38.7%に達すると推計されているそうです。一方、15歳から64歳人口の割合は2024年で59.6%、2070年には52.1%まで減少すると言われています。さらに、15歳未満の人口割合に関しては、2024年の11.2%から2070年には9.2%へと減少すると推計されています。つまり、2070年には日本の将来を担う若者が全人口のわずか1割にとどまり、一方で全体の4割を65歳以上の高齢者が占めるようになると予測されていることになります。
今後ますます深刻化する働き手不足への対応策として、働き続けることを希望する高齢者の活躍を後押しし、より働きやすい仕組みを整備していくべきとの観点から、在職老齢年金制度の見直しが行われています。

繰り下げ受給を選択した場合でも、在職老齢年金制度の適用を受けることに注意が必要です

厚生労働省によると、現行の在職老齢年金制度においては、全体の16%が年金の一部又は全部の支給停止を受けているとのことです。このたび2026年4月より支給停止基準額が大幅に引き上げられることにより、この在職停止者の割合は減少し、支給停止を受けずに年金を受給できる方が増えることでしょう。
在職老齢年金制度を考える上で、注意すべきは「年金の繰り下げ受給」をする場合です。老齢年金は、65歳で受け取らずに、66歳以後75歳までの間で繰り下げて増額した年金を受け取ることができます。この場合、繰り下げた期間によって年金額が増額され、その増額率は一生変わりません。
しかしながら、年金の繰り下げ受給では、65歳以後に厚生年金保険に加入していた期間がある場合、もしくは70歳以後に厚生年金保険の適用事業所に勤務していた期間がある場合、在職老齢年金制度により支給停止に該当する額を除いて、繰下げ加算額が計算されます。

出典:日本年金機構「年金の繰下げ受給

つまり、老齢厚生年金を増額させようと繰り下げ受給を選択しても、在職老齢年金制度が繰り下げによるメリットに負の影響を及ぼすことがある、ということです。65歳以上も社会で活躍し続けるシニアであれば、このあたりの制度も十分に考慮して、ご自身の年金受給を考える必要があるでしょう。

参考:
厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて
日本年金機構「年金の繰下げ受給

LINEで送る

ハーモスなら勤怠・給与・労務業務を550円/月〜で効率化!※お一人あたり
おすすめの記事