
新年度を迎えるに先立ち、今年も春闘の時期がやってきました。日本労働組合総連合会のウェブサイトには、既に第1回回答集計の速報が公開されています。既にご覧になった方もいらっしゃるでしょうか?
そもそも「春闘」とは?
春闘とは、賃金引上げや労働条件の改善を求めて行われる労働運動のことです。日本では、多くの企業が会計年度を4月1日から翌3月31日としていることから、新年度直前の2~3月にかけての時期に、労働組合が中心となって労働条件に関し要求・交渉を行うことが慣例となっています。正式名称は「春季生活闘争」です。
参考:日本労働組合総連合会「春闘(春季生活闘争)」
中小組合及び非正規時給の賃上げ率が上昇傾向へ
すでに2024 春闘において、33 年ぶりの5%台の賃上げが実現しているものの、その実態に目を向ければ、生活が向上したと実感している人は少数にとどまり、個人消費は低迷しています。2025年春闘では賃上げについて、「所定内賃金で生活できる水準」の確保、「働きの価値に見合った水準」への引き上げが目指されます。
2025年春闘の動向について、第1回回答集計の概要は下記の通りです。
■ 平均賃金方式で回答を引き出した 760 組合の加重平均(規模計)は 17,828 円・5.46%と、昨年同時期を上回った(昨年同時期比 1,359 円増・0.18 ポイント増)。基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を合わせた正社員の賃上げ率が5%超となるのは昨年から2年連続。
■ 300 人未満の中小組合(351 組合)は、14,320 円・5.09%で、昨年を上回るとともに(昨年同時期比 2,408 円増・0.67 ポイント増)、昨年比の上げ幅では規模計をも上回った。中小組合の賃上げ率が 5%以上となるのは、1992 闘争(5.10%)以来 33 年ぶり。
■ 有期・短時間・契約等労働者の賃上げ額(加重平均)は、時給 75.39 円(同 4.29円増)と、昨年同時期を上回った。時給の引上げ率(概算)は 6.50%(同 0.03 ポイント増)と、一般組合員(平均賃金方式)をも上回っている。
出典:日本労働組合総連合会「第1回回答集計(2025年3月14日集計、3月14日公表) プレスリリース・総括表」
企業規模間格差と雇用形態間格差の是正
2025春闘において特筆すべき点は、何と言っても「中小組合と非正規労働者の賃上げ率アップ」でしょう。賃金引き上げにおいて、企業規模間格差と雇用形態間格差の是正が着実に進められていることが分かります。
各社の春闘の要求・回答の状況、昨年実績については下記よりご確認いただけます。
参考:日本労働組合総連合会「回答速報 No.5(全共闘連絡会議)[2025年3月14日掲載] 」
賃金引上げ以外にも、注目すべき企業の労働条件改善策
賃上げ率引き上げの他、回答速報からは各企業における労働条件の改善に向けた姿勢を垣間見ることができます。下記の集計資料によると、「所定労働時間の短縮」「裁量労働制の適正運用」「同一労働同一賃金に向けた労働条件の点検・改善」「ハラスメント対策と差別禁止に関する取り組み」「2025年4月施行の改正育児・介護休業法対応」等の観点から現場では様々な取り組みがなされ、各社独自に必要な働き方の見直しが行われていることが伺えます。
参考:日本労働組合総連合会「労働条件に関する2025春季生活闘争および通年の要求・取り組み件数」
労働者の生活に直接関わる「賃金の引上げ」はもちろん重要な課題ですが、労働者が永く安心して働ける環境を整備することも、欠かすことのできない企業責任といえるでしょう。賃上げと併せて少しずつでも前向きな取り組みがされていることは、確実に評価すべき事柄です。
今号でご紹介した春闘に関する発表は、労働者の賃金や待遇、労働環境を考える上で、いずれの企業でも参考にしていただける内容となっています。今回取り上げたのは第1回解答集計結果ですが、日本労働組合総連合会のウェブサイトには、今後、2025春闘に関わるまとめのレポートが随時更新される予定です。「春闘なんて大企業だけの話」と切り捨てることなく、小規模企業の事業主様も内容を確認されてみてください。