
2025年7月公表の厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」によると、2024年度の育児休業取得率は女性で86.6%(前年度比2.5ポイント増)、男性で40.5%(前年度比10.4ポイント増)とのこと。これまで伸び悩んでいた男性の育休取得率が顕著な伸びを見せる一方で、各都道府県労働局からは育児休業給付金支給申請事業所宛に「申請誤りによる回収事案の増加」に係る注意喚起がなされています。育児休業給付金の支給申請に際し、注意すべき点を確認しましょう。
目次
育児休業給付金の支給申請 ここに注意!
育児休業給付金の申請誤りは、主に「休業者の現況確認不足」により生じる傾向にあります。特に2回目以降の申請時には、以下の点で確認が必須となる点に注意しましょう。
① 職場復帰の確認
現場責任者・人事責任者へ育児休業対象者に係る復帰の確認を行いましょう。育児休業給付金は、原則として「子どもが1歳になる日の前日まで」支給されますが、育児休業を途中で切り上げて職場に復帰した場合、支給は「復帰日の前日まで」となります。育児休業から職場復帰していたにもかかわらず、育児休業中として申請したため、職場復帰日以降の期間も含めて支給されるケースがあります。
② 退職予定の確認
申請書提出時点で、雇用保険喪失(離職等)申告漏れ、退職の予定(申し出)はありませんか?育児休業中に退職をする場合、育児休業給付金は「退職日(雇用保険の資格喪失日の前日)まで」の支給となります。育児休業期間中に退職していた場合でも、誤って育児休業中として申請することで、退職日以降の期間も含めて不正に支給されてしまいます。
③ 他の子に係る産前産後休業または育児休業の開始の確認
育児休業給付期間中に次の子に係る産前産後休業又は育児休業が開始していませんか? 次の子に係る産前産後休業又は育児休業が開始された場合、「新たな休業開始日の前日」をもって当該育児休業給付は終了となります。育児休業期間中に他の子の産前産後休業または育児休業を開始しているにもかかわらず、育児休業中として申請することで、他の子の休業期間も含めて支給されることになり、過誤払いが発生します。
④ 支給対象期間の延長の申出の確認
支給対象期間の延長手続きの漏れはないですか?育児休業給付金の支給は原則1年間のところ、保育所に入所できない等のやむを得ない事情があれば延長が可能です。ただし、あらかじめ延長申請を行う必要があります。支給対象期間延長の申出をしないまま支給申請を行っても、当然のことながら支給は当初の期間を以って終了となります。
⑤ 育児休業期間中の就業や賃金支払の有無の確認
休業期間中に出勤はありませんでしたか?また、その分の給与支払いはありませんか?育児休業中に就業して賃金が支払われた場合、その金額によっては給付金が減額される仕組みになっています。この点、育児休業期間中に就業した日や賃金の支払いがあったにもかかわらず、就業なし・賃金の支払いなしと申請すると、誤った金額が支給されることになります。
育児休業給付金の過誤払いは、「全額一括返納」の対象に!労使トラブル回避のために、誤りのない申請を
支給された育児休業給付金に過誤払いが確認された場合、支給額の全額を一括で返納し、改めて給付金の申請をやり直す流れとなっています。育児休業給付金は、受給対象者ご本人に直接振り込まれるため、返納についても、受給対象者ご本人による給付金の返納が求められるのです。なお、対象期間の全額返納が完了するまで、その後の支給は停止となります。
育児休業給付金の過誤払いに伴う返納に際しては、労働局やハローワーク宛に「事業所の申請ミスが理由なので、事業所で一時立替えてほしい。」といった相談が寄せられることもあり、労使トラブルの火種となる可能性があります。休業者とのコミュニケーションを十分にとり、誤りのない形での支給申請を徹底しましょう!
2025年11月17日から、「育児休業等給付コールセンター」が開設されます
なお、2025年11月17日より、育児休業等給付専用のコールセンターが設置されます。近年複雑化しつつある育児休業関連給付について、支給内容から申請手続きについてまで、幅広く問い合わせに対応してもらえるようです。近年複雑化する育児休業等給付の申請時に、ご活用ください。
参考:厚生労働省「育児休業等給付コールセンター」

