
5月も下旬を迎え、今年も夏のボーナスシーズン目前となりました。ここ数年の賞与支給額増加傾向の一方、トランプ関税による影響が危惧される2025年度夏季賞与ですが、実際にはどのような見通しとなっているのでしょうか。その動向を確認すると共に、実務上つい忘れがちな「賞与支払届」についても復習しておきましょう。
目次
2025 年夏季賞与は、春闘における賃上げ傾向と好調な企業収益、人手不足の影響で4年連続の増加見込み
第一生命経済研究所が発表した「2025年・夏のボーナス予測」によると、2025年夏の民間企業の一人当たりボーナスは前年比+2.3%(42.4万円)となり、夏のボーナスとしては4年連続で+2%台の高い伸びが見込まれるとのこと。こうした背景には、春闘における月例給与の引き上げ及び一時金の増額回答、底堅く推移する企業業績、人手確保のための賃上げ等が挙げられるとのことです。
トランプ関税の影響が懸念されますが、大企業では春闘交渉時に夏冬のボーナス増額で妥結済みのケースが多い他、中小企業においても夏段階では賞与への影響は限定的との見通しです。
参考:株式会社第一生命経済研究所「2025年・夏のボーナス予測」
支払日から5日以内に忘れず手続き!「賞与支払届」の実務をチェック
賞与支給時、忘れてはならないのが「賞与支払届」への対応です。多くの企業で年に1~2回のお手続となるためうっかり失念しがちである他、初めて「賞与支払届」に対応するご担当者様もいらっしゃるであろうことから、今号では「賞与支払届」の流れを確認しておきましょう。
賞与に係る社会保険料算定のための「賞与支払届」
社会保険制度上、賞与についても健康保険・厚生年金保険の毎月の保険料と同率の保険料を納付することになっています。事業主が被保険者および70歳以上被用者へ賞与を支給した場合には、支給日より5日以内に「被保険者賞与支払届」により支給額等を届け出て、社会保険料や年金の計算の基礎となる標準賞与額を決定する手続きを行います。届出期限が「賞与を支払った日から5日以内」と、非常にタイトなスケジュールとなっている点にご留意ください。
毎年同じ時期に賞与支払のある事業所では、「賞与支払届」はお手元に届いていますか?
賞与支払予定月の前月になると、新規適用届もしくは事業所関係変更(訂正)届にて賞与支払予定月を登録した事業所宛に、日本年金機構から賞与支払届や賞与不支給報告書等の書類が送付されます。賞与支払届が届いたら、まず印字された内容をご確認ください。印字された被保険者氏名等の内容は、賞与支払予定月の前々月の19日までの情報がベースとなっていますので、他に対象者がいる場合は追記が必要です。
なお、賞与支払届の様式は、以下よりダウンロード可能です。賞与支払月の登録をしていない等で書類が届かない場合には、ご活用ください。
参考:日本年金機構「主な届書様式の一覧」
賞与支払月の登録がある事業所で、今回賞与を支給しない場合は「賞与不支給報告書」の提出を
賞与支払届関係の書類が届いた事業所で、今夏の賞与を支給しない場合、同封の「賞与不支給報告書」を提出しましょう。2021年以前には、賞与不支給の場合にその旨を「被保険者賞与支払届総括表」にて届け出ていましたが、総括表廃止に伴い専用の報告書用紙にて行うことになりました。
なお、日本年金機構に賞与支払予定月を登録していない事業所では、賞与不支給報告書の提出は不要です。
参考:
日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」
日本年金機構「【事業主の皆さまへ】令和3年4月からの賞与支払届等に係る総括表の廃止及び賞与不支給報告書の新設について」
「賞与支払届」の送付希望又は送付停止希望、賞与支払時期の変更等がある場合のお手続
今後賞与支払届の送付を受けたい場合や送付を停止したい場合、もしくは賞与支払届の送付時期を変更したい場合には、登録内容の変更を届け出る必要があります。
賞与支払予定月の登録・変更・抹消は、「健康保険厚生年金保険 事業所関係変更(訂正)届」によって行います。
■ 賞与支払予定月を新規登録する場合:
「⑲賞与支払予定月」欄の「1.登録(変更)」に〇をし、支払予定月を記入
「⑳賞与届用紙作成」欄の「0.必要」に○
■ 賞与支払予定月を変更する場合:
「⑲賞与支払予定月」欄の「1.登録(変更)」に〇をし、変更後の支払予定月を記入
「⑳賞与届用紙作成」欄の「0.必要」に○
※「賞与不支給報告書」に従前の賞与支払予定月を変更する場合の記載欄があり、そちらで変更することも可能
■ 賞与支払予定月の登録を抹消する場合:
「⑲賞与支払予定月」欄の「2.全解除」に〇をし、「⑳賞与届用紙作成」欄の「1.不要」に○
参考:日本年金機構「事業主の変更や事業所に関する事項の変更があったときの手続き」
遅滞なく、賞与支払届への対応を
民間企業における夏季賞与の支給時期となる6月から7月にかけては、ちょうど労働保険年度更新や健康保険・厚生年金保険算定基礎届の時期と重複し、関連部署における繁忙期となります。「賞与支払届」の提出はつい忘れられがちになりますが、確実に対応できるようにしておきましょう。