
健康保険事業の運営主体である保険者は、保険給付の適正化を図る目的で、定期的に「被扶養者資格の再確認」を実施しています。協会けんぽでは、例年10月下旬から、確認に係る資料を各事業所宛に送付しています。従業員からの申し出を受けて被扶養者(異動)届を提出した場合でも、その後会社が積極的に被扶養者に係る状況確認を行うケースは少ないのではないでしょうか?年に一度のこの機会に、各事業所で、扶養解除となる被扶養者の有無を確認しましょう。
目次
10月下旬以降、「被扶養者状況リスト」が届いたら、2025年12月12日までに返送を
「被扶養者資格の再確認」とは、健康保険の被扶養者となっている方が、現在もその状況にあるかを確認する作業です。協会けんぽでは毎年10月下旬から被扶養者資格の再確認を実施しており、2025年度も実施されます。
再確認の対象者は「扶養解除の可能性の高い対象者」に限定
2025年度の被扶養者資格の再確認では、「扶養解除の可能性の高い以下の対象者」に絞って確認作業が実施されます。
①健康保険の資格が重複している可能性が高い方
②同居が扶養認定の要件となっている続柄の方のうち、被保険者と別居している可能性が高い方
③2024年中の課税収入額が130万円(60歳以上は180万円)の金額を超過している方
(18歳未満の方や直近で認定された方を除く)
再確認の対象者がいない場合は、被扶養者状況リストは送付されません。
被扶養者資格の再確認の手順
10月下旬、協会けんぽから各事業所宛に「被扶養者状況リスト」が送付されます。リストが届いたら、事業主は被保険者に対して、対象の被扶養者が健康保険の被扶養者要件を満たしているか確認し、被扶養者状況リストに確認結果を記入の上、協会けんぽ宛に提出します。
確認の観点は、以下の通りです。
- 他の健康保険に加入していないか
・被扶養者が就職し、健康保険組合等の被保険者として資格を有しているが、
被扶養者の扶養解除手続きを行っていない
⇒扶養の解除手続きを行う
・新たに被扶養者となったが、以前加入していた他の健康保険等を脱退していない
⇒他の健康保険等の脱退手続きを行う
・同一の被扶養者の名前が被扶養者状況リストに重複して記載されている
⇒扶養認定日を確認する必要があるため、ご加入の協会けんぽ支部へ連絡を行う - 同居が必要な続柄の者が別居していないか
被扶養者となるためには、続柄に応じて同居・別居の必要要件が異なります。同居要件の被扶養者が被保険者と別居している場合は、扶養の解除手続きを行わなければなりません。
ア.被保険者と同居している必要がない者
配偶者、子・孫および兄弟姉妹、父母・祖父母などの直系尊属
イ.被保険者と同居していることが必要な者
上記ア以外の3親等内の親族(伯叔父母、甥姪とその配偶者など)
内縁関係の配偶者の父母および子(当該配偶者の死後、引き続き同居する場合を含む) - 被扶養者の年収が収入要件を満たしているか
・被保険者と被扶養者が同居している
⇒被扶養者の年収が130万円(※)未満、かつ、被保険者の年収の半分未満
・被保険者と被扶養者が別居している
⇒被扶養者の年収が130万円(※)未満、かつ、被保険者からの仕送り(援助)額より少ない - 被扶養者の年収が130万円(※)を超過している場合は、その原因が人手不足による労働時間延長に伴う一時的なものであるか
被扶養者の収入確認を行った際に、年収が130万円(※)以上であって、人手不足による労働時間の延長等に伴い、一時的に収入が増加していることが確認できた場合は、「一時的な収入変動」に係る事業主の証明書を併せて提出することで被扶養者として認定されます。ただし、被扶養者の年収が一時的に130万円(※)を3年連続超過していたことが確認できた場合は、扶養解除の手続きが必要となります。
関連記事:『年収130万円以上でも被扶養者認定が受けられる、「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」とは?』
参考:日本年金機構「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き」
扶養解除に該当する被扶養者については、速やかに扶養解除手続きを
確認の結果、扶養解除となる被扶養者がいる場合は、被扶養者状況リストに同封されている被扶養者調書兼異動届を記入し、解除となる方の保険証を添付して提出します。なお、通常の被扶養者異動届によるお手続でも問題ありません。
被保険者資格の再確認を通じて、「保険給付の適正化」と「保険料負担の軽減」を図りましょう
被扶養者資格の再確認実施の目的は、「保険給付の適正化」と「保険料負担の軽減」を図ることにあります。
被扶養者要件を満たさない方が被扶養者として保険証を利用して保険給付を受けることで、不適正な保険給付が生じることになります。また、高齢者医療制度は、税金と本人負担の他、協会けんぽを含む各医療保険者からの拠出金等(加入者から納められた保険料)によって支えられていますが、この拠出金額の算出には被扶養者数が反映されます。つまり、被扶養者でないはずの方を被扶養者とすることで拠出金に過剰支出が生じ、これにより保険料負担増が招かれます。
2024年度の被扶養者資格再確認において、被扶養者の解除となった人の数は約6.3万人(2025年3月31日現在)、被扶養者の解除により見込まれる前期高齢者納付金の負担軽減額は11億円程度と想定されます。各事業場では、被保険者資格再確認の趣旨を十分に理解し、適正な届け出を行いましょう。
参考:協会けんぽ「事業主・加入者のみなさまへ「令和7年度被扶養者資格再確認について」」