雇用保険はアルバイトでも加入すべき?週によって労働時間が変動する場合の被保険者資格取得はどうする?

新年度を迎え、新たにパート・アルバイトを雇い入れた事業場も多いのではないでしょうか?パート・アルバイトの労働条件明示ルールについてはすでに別記事で解説した通りですが、現場において意外と判断に迷われるのが「雇用保険の適用」についてです。社会保険・雇用保険にはそれぞれ被保険者要件が定められており、原則としてそれを満たす場合には被保険者となりますが、例外的な取扱いもあります。パート・アルバイトの雇用保険資格取得ルールを改めて確認しましょう!

雇用保険被保険者要件は2つ!「週20時間以上」「31日以上の継続雇用」

まず、原則的な雇用保険被保険者の要件を確認しておきましょう。雇用されている労働者は、常用雇用、非正規雇用(パート・アルバイト・有期雇用)といった名称や雇用形態、労働者本人の希望の有無に関わらず、以下①②の両方の要件を満たす場合に雇用保険被保険者となります。

① 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
② 31日以上引き続き雇用されることが見込まれること(短期契約を繰り返す場合を含む)

ただし、以下URLに記載の通り、例外的に「被保険者とならない者」も定義されている点に注意が必要です。

参考:厚生労働省「雇用保険の被保険者について

原則「学生」は雇用保険被保険者となりません

ここで特に判断に迷われるのが、「学生」の取扱いでしょう。学生であっても、週所定労働時間20時間以上を前提として、長期的に雇用するケースは珍しくありません。
結論から申しますと、学生アルバイトは原則として雇用保険被保険者とはなりません。しかしながら、以下に該当する学生は、前項の要件を満たす限り雇用保険被保険者資格の取得が必要となります。

✓ 夜間・定時制の学生
✓ 通信制の学生
✓ 卒業見込証明書を有する者であって、卒業前に就職し、卒業後も引き続き同一事業所に勤務する予定の者
✓ 休学中の者
✓ 一定の出席日数を課程終了の要件としない学校に在学する者

例外的に学生を雇用保険被保険者とする場合、学校等による証明が必要となることがありますので、ハローワークにご確認いただくと良いでしょう。

週20時間を行ったり来たりのパート・アルバイトの雇用保険被保険者資格取得は「契約書」による

パートやアルバイトは、その特性上、各週、各月の労働時間が一定ではないこともあります。ある月は週20時間以上・月80時間以上となる一方、その翌月には週10時間・月40時間ほどの労働となるケースは決して珍しくありません。
このような場合、原則として「契約書上、週所定労働時間数が20時間以上であるかどうか」あるいは「実態として常時週20時間勤務しているかどうか」で被保険者資格取得の有無を確認することになります。契約当初は週20時間未満の労働契約だった場合でも、常態として週20時間以上の勤務となっているなら、雇用契約の内容を見直して実態に合った労働契約を締結し、その際に雇用保険被保険者資格の取得手続きを進めることになります。反対に、契約書上は週20時間以上である場合でも、実態としてこれを下回る状況が常態化しているなら、やはり雇用契約の内容の見直しと被保険者資格喪失手続きが必要となります。

雇用契約の内容と実際の勤務状況に、乖離がないよう整備しましょう

パート・アルバイトの場合、いつの間にか契約書上の内容と勤務実態が乖離していることは多々あります。しかしながら、これを放置していると、雇用保険等の被保険者資格取得や有休付与を適切な形で行うことが困難となり、労使トラブルの原因となりかねません。折を見て各パート・アルバイトについての契約内容と実態を確認し、ずれが生じている場合には労使間で十分に話し合い、今後の働き方を見据えた雇用契約の見直しを行いましょう。

番外編:2028年10月以降、雇用保険の被保険者要件が「週10時間」に変更へ

今号では、パート・アルバイトの雇用保険資格取得に係るルールを解説しました。ちなみに、雇用保険被保険者となる要件は2028年10月に変更が予定されています。具体的には、週所定労働時間を「20時間以上」から「10時間以上」に変更し、適用対象が拡大されることになっています。
雇用保険適用拡大が実施された場合、新たに加入することとなる被保険者見込数は最大500万人となり、現状パート・アルバイトを中心に雇用を進める事業場では相当数の対象者が生じることが予測されます。各現場においては、制度変更による影響を正確に把握した上で、今後の人材活用・採用戦略に係る検討を進めましょう。

関連記事:「【速報】2028年より予定される雇用保険適用拡大!「週所定労働時間10時間以上」で雇用保険加入へ

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