
こども性暴力防止法の施行に先立ち、対象事業者においてまず取り組むべきことのひとつに、「就業規則の整備」があります。同法に関連する就業規則改定に際しては、各事業者が制度の趣旨を十分に理解した上で、現場ごとに必要な条文を検討することが前提となります。今号では、こども家庭庁の通知資料より、必要規定項目及び規定例を確認します。各現場における就業規則改定のポイントを把握することが、現場における対応をぐんと前進させることにつながるでしょう。
目次
こども性暴力防止法の施行に伴い、必要となる就業規則規定事項
こども性暴力防止法によって義務付けられる従事者への犯罪事実確認、防止措置としての雇用管理等の対応は、現場においてトラブルの元となる可能性があります。よって、制度開始以前から、早期に就業規則等の整備や従事者への事前の確認・伝達等を行っておくことが重要となります。就業規則の整備は、2025年中から少しずつ進めておかれることをお勧めします。
就業規則に規定すべき項目として、こども家庭庁の資料では以下の事項が挙げられています。
• 対象業務従事者の範囲
• 児童対象性暴力等や、不適切な行為の範囲
• 犯罪事実確認の手続に応じる義務
• 試用期間の解約事由として重要な経歴の詐称
• 懲戒事由として重要な経歴の詐称、刑罰法規違反、企業秩序義務違反、業務命令違反、児童対性暴力等や、不適切な行為に該当する行為を行った場合
資料より、各項目規定例を確認しましょう。
対象業務従事者の範囲
教育保育関連の対象事業を営む事業者の元で勤務していたとしても、そこで働くすべての労働者がこども性暴力防止法の適用となるわけではありません。同法の対象となる「教育保育等従事者」を明確に定め、適切な対象について対応できるようにしておくことが求められます。
ここでは、民間教育保育等事業者の就業規則規定例をご紹介しておきましょう。
こども性暴力防止法の制度対象については、以下の資料にて詳しく解説されています。

参考:こども家庭庁「こども性暴力防止法の制度対象について」
児童対象性暴力等や、不適切な行為の範囲
本項目に規定例は、こども家庭庁通知「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律の施行に向けた周知依頼について(令和7年9月30日こども家庭庁支援局長通知)」の12枚目にてご確認いただけます。
「児童対象性暴力等」の内容は、今後施行されるこども性暴力防止法の第2条第2項に規定される予定ですが、すでに教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律(令和3年6月4日法律第 57 号)第2条第3項、及び「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する基本的な指針」(令和4年3年 18 日文部科学大臣決定、令和5年7月 13 日改訂)に明記されている通りです。
参考:
e-Gov「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律(令和三年法律第五十七号)」
文部科学省「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する基本的な指針(令和4年3月18日策定、令和5年7月13日改訂)」
「不適切な行為」の内容は、各施設・事業の性質や対象児童等の年齢・発達の状況等によって異なることが想定されます。「教育・保育等を提供する事業者による児童対象性暴力等の防止等の取組を横断的に促進するための指針」(令和7年4月こども家庭庁)における例示を参考に、各事業者の実態に応じて明確化することが適当です。ただし、従事者が実際に業務に携わるにあたり、就業規則上での行為の明確化が従事者の委縮を招く結果につながらないよう留意する必要があります。

出典:こども家庭庁「教育・保育等を提供する事業者による児童対象性暴力等の防止等の取組を横断的に促進するための指針(横断指針)」
犯罪事実確認の手続に応じる義務
こども性暴力防止法の施行により、対象事業者には、対象業務従事者に対する犯罪事実確認の実施が求められます。これに伴い、事業者は就業規則等において、対象従事者がこども性暴力防止法に基づく犯罪事実確認に必要な手続等に対応しなければならないことを定めると共に、周知・伝達しておく必要があります。

試用期間の解約事由として重要な経歴の詐称
対象従事者への犯罪事実確認の結果、特定性犯罪前科があることが確認された場合、事業者は防止措置として、
従事者の配置転換や業務範囲の限定、内定取消しや試用期間中の解約、普通解雇、懲戒処分など雇用管理上の措置を講じる必要があります。
こども性暴力防止法への対応の一環として、事業者は求職者に特定性犯罪前科の有無を事前に確認することとなります。このときに本人から特定性犯罪前科がない旨の申告があったものの、後になって特定性犯罪前科があったことが判明した場合、「重要な経歴の詐称」に該当するものとして対応できるよう、内定取消事由、懲戒事由等にあらかじめ定めを置く必要があります。
以下は、試用期間に係る規定例です。

懲戒事由
使用者が労働者に対して懲戒処分を行うためには、あらかじめ就業規則において懲戒事由及び懲戒種別を定め、その就業規則を労働者に周知しておかなければなりません。よって、こども性暴力防止法に基づく防止措置として懲戒処分を行うことを想定し、その有効性を巡るトラブルを防ぐため、就業規則に懲戒事由として次に掲げる内容を定め、従事者に周知することが求められます。
①「刑罰法規の各規定に違反する行為が認められた場合」、「企業秩序を乱した場合」等の一般的な刑罰法規違反・企業秩序義務違反
②「正当な理由なく、業務上の指示・命令に従わなかったとき」等の一般的な業務命令違反
③「こども性暴力防止法上の『児童対象性暴力等』に該当する行為を行ったとき」、「児童対象性暴力等につながる不適切な行為を行ったとき」
④重要な経歴の詐称
以下は懲戒事由の規定例です。

以上、すべての図の出典:
こども家庭庁通知「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律の施行に向けた周知依頼について(令和7年9月30日こども家庭庁支援局長通知)」
就業規則の改定と併せて、「適切な手順での届出」、「労働者への周知」を
今号では、こども性暴力防止法に伴う就業規則の改定条文例を解説しました。ご紹介した改定ポイントに則り、各現場に則した条文の検討を進めてまいりましょう。
なお、就業規則改定に際しては、「正しく届け出が行われていること」、「従業員への周知がなされていること」が不可欠となります。具体的には、常時10人以上の労働者を雇用する事業場における所轄労基署への届出、適正に選出された労働者の過半数代表者の意見書の作成・添付、さらに、就業規則が適用される労働者への周知徹底等が挙げられます。特に、従業員に周知されていない就業規則は無効になる可能性がありますので、正しく対応しましょう。

