2025年3月卒の新卒内定取り消しは「21社34人」|企業は原則、内定取り消しできません!

10~11月にかけては、企業の内定式シーズン。この時期、半年後の入社に学生たちが胸を膨らませる一方、しばしば問題となるのが企業による「内定取り消し」です。会社側からの一方的な内定取り消しは解雇に相当するため、これが認められるためには客観的に合理的な理由が求められます。今号では、内定取り消しの実情を確認すると共に、内定取り消しを行う企業側のリスク、例外的に内定取り消しが認められるケースについて考えてみましょう。

内定取り消しは減少、一方で「入職時期の繰下げ」が急増

厚生労働省は、2025年3月卒の新卒内定取り消し、及び入職時期の繰下げについて、あらかじめハローワークに通知された数の取りまとめ結果を公表しました。

採用内定取消し状況

2025年3月新卒者の内定取消し 21事業所・34人
2024年3月新卒者の内定取消し「25事業所・47人」に対し、減少傾向にあります。産業別では「情報通信業」が「3事業所・11人」、企業規模別では「99人以下」が「13事業所・24人」と多くなっています。また、取消理由としては、会社の倒産や経営悪化に該当しない「その他」が最多です。

入職時期繰下げ状況

2025年3月新卒者の入職時期繰下げ 2事業所・93 人
2024年年3月新卒者の入職時期繰下げ が1事業所・1人だったところ、大幅に増加していることが分かります。入職時期繰下げを受けた学生生徒のその後の状況として、93人全員が当該事業所に就職しておらず、一定数が仕事に就くことができずに求職活動の継続を余儀なくされていることは問題視されるべきでしょう。

出典:厚生労働省「令和7年度新卒者内定取消し状況を公表します

所定の要件を満たす内定取り消しは「公表」に対象に。内定取り消しのリスクに目を向けましょう

厚生労働省は職業安定法施行規則の定めにより、事業主等の通知の内容が下記のいずれかに該当する場合に、学生・生徒等の適切な職業選択に役立つよう、その通知の内容を公表することができるとされています。

厚生労働省による公表には至らずとも、近年のインターネットの普及に鑑みれば、SNS等を通じての拡散の可能性は容易に想定できます。「内定取り消しを行う企業」というイメージが浸透すれば、次年度以降の採用活動にも、支障が生じる可能性があります。また、企業イメージの低下や社会的信頼の失墜は、企業自体への影響はもちろんのこと、既存社員や取引先、顧客等にも迷惑が及ぶでしょう。そしてもちろん、内定取り消し対象者との間に訴訟リスクが生じることは言うまでもありません。

原則禁止の「内定取り消し」 どんな場合に認められる?

厚生労働省「新規学校卒業者の採用に関する指針」には、「事業主は採用内を定取り消さないものとする」と明記されています。しかしながら、業績悪化等によるやむを得ない事情がある場合に限り、所定の手続きを経ることで認められる場合があります。その際に検討されるのが、下記に挙げる「整理解雇の4要件」です。

・ 人員整理の必要性
・ 解雇回避努力義務の履行
・ 被解雇者選定の合理性
・ 手続の妥当性

また、内定取り消しを検討すべき場合には予めハローワークに通知し、その後の指導に従い対応することになります。併せて、内定取り消し対象者の就職先確保に最大限の努力を行うこと、補償などの要求に誠意をもって対応することが必要です。

学生は、採用内定時点で他社への応募やすでに得ていた他社の内定を辞退し、他社への就職の機会を放棄することになります。よって、企業は、自社の一方的な都合による内定取り消しが生じない様、計画的に採用活動を行わなければなりません。採用計画の立案や募集の際に留意すべきポイントを、前出の「新規学校卒業者の採用に関する指針」より抜粋します。

採用内定とは、「始期付解約権留保付労働契約」の成立を意味します。つまり、内定就業始期まで一定の期間が空くこと、内定者が学校を卒業できない等やむを得ない事情がある場合に内定取り消しの可能性があること等の条件は付くものの、労使間でれっきとした労働契約が成立するということです。「多く採用しておいて、いざという時は内定者の採用を見送れば良い」等の方針は論外です。

現状、戦略的な採用活動ができているでしょうか?企業の採用に関わるご相談は、人事の専門家である社会保険労務士までお気軽にお寄せください!

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