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【新型コロナウイルス】全国に緊急事態宣言発令!企業における休業手当の支払義務はどうなる?雇用調整助成金の活用で60%支給が賢明か。

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、7都府県に限定して発令した緊急事態宣言の対象が、2020年4月16日より全国に広げられています。緊急事態宣言の発令を受け、企業に対し出勤自粛や休業要請が求められる事態となりましたが、これにより問題となるのが従業員に対する休業手当の支払いです。厚生労働省が公開する「雇用調整助成金FAQ」(2020年4月15日時点)での見解を深めると共に、企業における適切な対応を考えてみましょう。

緊急事態宣言を受けての休業に伴う手当の支払い、厚生労働省の見解は?

緊急事態宣言を受けての休業に際し、休業手当の支払いが必要かどうか、厚生労働省のFAQによると、下記の通り記載があります。

問 41 「緊急事態宣言」を受けて休業する場合は、事業主は労働基準法26条
に基づき休業手当を支払わなければなりませんか。

答 休業手当を支払うべきか否か、個別の判断になりますので、お近くの労働基
準監督署にお問い合わせください。

出典:厚生労働省「雇用調整助成金FAQ(4月15日現在版)」

報道等を見聞きする限り、政府は企業に対し、今般の新型コロナウイルスの影響に伴い休業となる従業員への手当の支払いを強く求めていますが、肝心な資料の中では、上記の通り明言を避けています。これでは、現場に混乱が生じるのは当然のことです。

法律上は大半の企業が休業手当支払いの対象外か

ここ数日、弊事務所には「休業手当が支給されない」といった個人(労働者)からのご相談が多く寄せられています。確かに、働く側としては労働を提供する意思があり、雇用契約上も過去の実績からも、この1~2ヵ月のシフトカットや時短勤務要請が異常であると容易に判断できるならば、従業員としては「少なくとも会社都合で削減された勤務時間分については、休業手当の支給対象となるべき」と考えるのが妥当でしょう。

しかしながら、一方で企業側からしてみれば「社会的な要請に応じる形での休業や事業縮小なのに、なぜ従業員の休業手当を会社が負担しなければならないのか」といった疑問が生じてしかるべきとも言えます。

労働基準法第26条に基づく休業手当の支払い対象外となるのは、下記2つの要件を満たす場合です。


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そもそも、緊急事態宣言の発令を受けての休業に際し、企業は従業員に休業手当を支払わなければならないのでしょうか?

休業要請対象の業種、テナント・商業施設の閉館に伴う休業の場合

緊急事態宣言が出されると、自治体の判断の元、特定の業種に対し休業要請ができるようになります。この要請に法的な強制力はないとはいえ、営業を自粛しないことで企業イメージを損なう、報道や自治体の公表を通じて店名や社名が明らかにされてしまう等の可能性があることを鑑みれば、実質的に拘束されるものです。
休業要請の対象として、東京都の場合、キャバレーやバー、ライブハウス等の遊興施設、大学や学習塾、スポーツジムやパチンコ店等の運動・遊戯施設、劇場等、集会・展示施設、商業施設等を挙げています。
前述の通り、これらの施設について、休業要請が出ている以上、営業を継続することは困難ですから、「使用者の責めに帰すべき事由がない(不可抗力)」を満たすことになります。
また、テレワークでの対応が難しい業種においては、「経営者として最大の注意を尽くしても避けることのできない」ともいえます。
休業要請の対象外の業種であっても、入居する商業施設が閉館となれば、やはり営業することはできません。
よって、法律上「休業手当の支払い義務は生じない」ことになります。

自主的な営業自粛の場合

一方、休業要請の対象とはなっておらず、なおかつ医療機関等のように事業を継続すべきともされていない業種の場合はどうでしょうか。多くの場合、現状、判断が現場に委ねられる形となっており、労使間で混乱が引き起こされています。
確かに、営業自粛があくまで自主的なものだとすれば、使用者の責めに帰すべき事由はあると考えることができるというのが通例です。とはいえ、前例のない緊急事態宣言発令下においては必ずしも通例を適用することは相応しくありません。
今般、実質的な出勤者の減少が求められていることは確かであり、これを実現するためにやむなく営業時間の短縮や営業自粛が行われているケースもあります。とりわけ接客業等、在宅勤務で業務を進めることが難しい業種では、やむを得ず出勤者を減らしたり、従業員に休業を命じたりする必要が生じるでしょう。とはいえ、通常通り営業することで、社会的なイメージダウンにつながります。政府や自治体の要請に従う措置であれば、やはり不可抗力的な部分があると言わざるを得ず、法律上の休業手当の支払義務を企業に負わせるのはいかがなものか、と感じます。

重要なのは「法律上はどうか」ではなく、労使で共に苦境を乗り切る上でどうするべきか?

このように、全国を対象に緊急事態宣言が発令されるに至り、従業員のみならず、企業もまた、かつて前例のない困難に直面する今日においては、必ずしも使用者側に法律上の休業手当の支払義務があるかといえば、一概にそうとは言えない事情があります。

だからといって、使用者が従業員に対して何ら手当の支給もしなくて良いというわけでもありません。もっとも、たとえ法律上の休業手当の支払義務はなくても、これまで会社のために頑張ってきた従業員に対して、「何かしてあげたい」という使用者は少なくないと思います。例えば、自社だけで人件費を捻出することは難しくても、雇用調整助成金を活用して法律が定める60%の休業手当を支給できる可能性は出てくるのではないでしょうか。

参考:厚生労働省「雇用調整助成金」

労基法上の休業手当の支給義務がない場合で、雇用調整助成金の活用が難しければ、法律上の基準である60%を下回っても会社独自の休業手当制度を創設するのも良いでしょう。社会保険労務士をご活用いただき、御社にとってどのような取り組みが適切かをご検討いただくことも有効かと思います。

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誰もが厳しい現実に直面する中で、労使がどのようにこの苦境を乗り切れるかに目を向けることが重要です。新型コロナウイルス感染症が収束した後、より一層労使間の信頼関係が良好なものとなっていることを目標に、企業には今出来る最善を尽くす姿勢が求められます。

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