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2024年男女賃金格差の現状は?現場で活用したい厚生労働省「男女間賃金差異分析ツール」がリリース

男女間の賃金格差は、日本社会においてかねてより問題視されてきた労務課題のひとつです。2022年7月8日施行の改正女性活躍推進法により、従業員数301人以上の企業に対して「男女の賃金の差異」の公表が義務付けられ、目下、企業における一層の意識改革が推進されていますが、実態はどのように変化しているのでしょうか?2024年の「賃金構造基本統計調査」から、男女間賃金格差の現状を把握しましょう。

男女間の賃金格差は縮小傾向。最も格差が大きいのは「50代後半」

2024年の「賃金構造基本統計調査の概況」によると、男女間の賃金格差について、月額賃金で男性36万3100円に対し、女性が27万5300円であることが明らかになっています。この数字は、男性の月額賃金を100とした場合、女性は男性の75.8%となり、男女間で24.2%の開きがあることを示します。

男女間の賃金格差、近年の動向

この「24.2%」をどう捉えるかですが、2023年の「25.2%」から1.0ポイント縮小、男女間の賃金格差は統計開始以来最も小さくなっているとのことです。これまでの数字を見ても、少しずつではありますが、男女間の賃金格差は徐々に解消されつつあることが分かります。

男女間の賃金格差 年代別

年代別の賃金格差の程度を示すグラフです。若年層では大きな差異はありませんが、30代以降開きが大きくなり始め、「50~59歳」では男女差が最大となっています。いわゆる働き盛りの年代は結婚・妊娠・出産・育児といったライフイベントが生じる時期と重なり、女性は男性以上に働き方への影響を受けやすいことを表しています。こうしたジェンダー格差を解消すべく、近年、政府はあらゆる両立支援策を講じています。今後どのように状況が変化していくのか、注目が集まるところです。

図の出典:e-Stat「令和6年賃金構造基本統計調査_概要

自社の課題抽出に役立つ、厚生労働省「男女間賃金差異分析ツール」

冒頭でも触れましたが、2022年7月8日施行の改正女性活躍推進法により、従業員数301人以上の企業に対する「男女の賃金の差異」の公表が義務化されています。これをきっかけに、自社の女性活躍に関する課題に目を向ける現場は増えているのではないでしょうか。
このたび厚生労働省より、中小企業向けに、男女間賃金差異の要因を分析できる「男女間賃金差異分析ツール」が公開されました。自社の男女間賃金差異をはじめとする労務管理の基本データを入力することで、同業種・同従業員規模の企業平均のデータと比較が可能となります。課題が見える化されることで、より効果的な取り組みを検討できるようになるはずです。

参考:厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ_お役立ちツール_男女間賃金差異分析ツール」

併せて「活用パンフレット」も公開されているので、細かな入力にも問題なく対応できそうです。パンフレットには、「見える化された課題ごとの雇用管理の見直し方法」として課題タイプ別の取り組み内容が紹介されています。男女格差解消や女性活躍に向けて「何か取り組みたい!」という現場はオススメのツールです。

男女間の「説明できない賃金格差」の是正を

さて、男女間の賃金格差について、皆さまはどのようにお考えになるでしょうか?私自身は、男女間に賃金格差が生じることはある程度やむを得ない部分はあると感じる一方、「根拠のない格差」については直ちに是正されるべきであると考えます。
女性の場合、妊娠・出産を望むとなれば、男性と同等に働き続けることはどうしても難しいです。妊娠・出産にあたっては常にベストな体調で就業することはできませんし、出産のための休業期間も生じます。こうした状況を踏まえれば、女性の一時的な賃金低下は不可避と言わざるを得ません。
しかしながら、日本社会で長年、暗黙の了解とされてきた「客観的な理由のない賃金格差」は問題視すべきでしょう。女性であっても男性と同じ業務に従事し、同等の労務提供をしているのであれば、給与面での差異はつけるべきではありません。「男性が外で働き、女性が家事をすべき」という固定観念から、当人との話し合いもなく、女性というだけで責任あるポジションから外す、男性のみがいわゆる出世コースを歩むというのは論外です。こうした固定観念は、特に育児中の女性に向けられがちですが、たとえお子さんのいる女性であっても希望する働き方は人それぞれですし、家庭ごとに子育ての形は異なります。「女性だから」「子育て中のママだから」という理由だけで会社側が本来不必要な就業上の配慮をしているケースもありますが、こうした対応こそが「説明できない格差」の温床となります。まずは労使間で十分なコミュニケーションをとることが、男女間格差是正の大原則と言えるでしょう。

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