貴社では、雇用保険被保険者資格取得手続き後、被保険者証を労働者に交付しているでしょうか?現場によっては会社保管として退職時に労働者に渡すケースもあるようですが、実はこうした取扱いは適切ではありません。現状、雇用保険被保険者証を会社保管としている事業場では、速やかに労働者にお渡ししましょう。
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労働者に対する雇用保険被保険者証の交付は、雇用保険加入手続き完了の証明となります
雇用保険被保険者証は、「在職中に使うことがない」「従業員による紛失や汚損を防ぐため」等の理由から、交付を受けても退職まで会社保管とする例は少なくありません。むしろ、ひと昔前までは会社保管が一般的であった印象さえあります。しかしながら、雇用保険被保険者証の会社保管は、雇用保険法施行規則10条違反です。企業のご担当者様は、雇用保険被保険者証の取扱いにはくれぐれもご注意ください。
今一度確認!雇用保険被保険者資格取得手続き後の書類の流れ
雇用保険の被保険者要件である「週所定労働時間20時間以上」「31日以上の雇用見込み」を満たす従業員を雇い入れる際、事業主はその従業員を雇用保険の被保険者とする手続きを行う必要があります。具体的には、「雇用保険被保険者資格取得届」を、当該従業員が被保険者となった日の属する月の翌月10日までにハローワークに提出しなければなりません。
被保険者資格取得の手続きが完了すると、ハローワークから「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用・事業主通知用)」「雇用保険被保険者証」が交付されます。このうち、「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」「雇用保険被保険者証」は、雇用保険の加入手続きがなされたことを従業員本人が把握するための書類となるため、交付後は本人に渡す必要があります。
「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)」は「完結の日から4年間」保管義務あり
交付書類のうち、「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)」については、会社が従業員の雇用保険加入の有無を確認するための書類となります。被保険者に関する雇用保険関連書類は、従業員の資格喪失から4年間の保管義務がありますので、保管義務のある期間内は大切に保管しましょう。
雇用保険資格取得手続きを行ったかどうか分からない!困った時の対応方法
雇用保険被保険者資格取得を巡っては、実務上のトラブルを散見します。「そもそも資格取得手続きを行ったかわからない」「手続きを行ったが、書類が見当たらない」等は、社労士宛によく相談が寄せられるテーマです。
「事業所別被保険者台帳(写)」の交付請求により、事業場の雇用保険被保険者資格取得状況を確認
会社が従業員の雇用保険被保険者資格取得手続きを行ったかどうかの確認は、ハローワーク宛の「事業所別被保険者台帳(写)」交付請求によって行うことができます。台帳には、従業員の雇用保険番号、取得日、生年月日等が記載されています。
また、従業員が自身の雇用保険加入の有無を確認する場合には、マイナポータルから雇用保険制度・求職者支援制度の関係情報を把握することが可能です。
参考:厚生労働省リーフレット「マイナポータルであなたの雇用保険の加入記録などを確認することができます。」
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『複雑な雇用保険手続きの「こんな時はどうする?」が分かる!「雇用保険適用業務 質疑応答集」を要チェック』
慌てないで!雇用保険被保険者資格取得は遡及して手続きできます
調べた結果、雇用保険に加入させるべき従業員の資格取得手続きができていなかった場合、冷静に遡及加入手続きを進めましょう。雇用保険被保険者資格取得手続きは、原則2年間の遡及が可能です。また、給与明細、賃金台帳、源泉徴収票等から雇用保険料控除が確認できる場合には2年以上の遡及が認められます。
関連記事:『こんなとき、どうする?雇用保険の加入手続きを行っていなかった場合に遡って加入する方法』
会社の業務フローを見直して、雇用保険関係のトラブル回避を
在職中に出番のない雇用保険に関しては、入社後しばらく経ってからトラブルが発覚することも少なくありません。企業のリスク管理の観点から、会社が行った手続きの状況は従業員に共有する(雇用保険被保険者資格であれば、手続き完了の証として被保険者証を渡す)等の徹底が求められます。雇用保険被保険者証等の「従業員のものを会社が預かっておく」という取扱いは、あらゆるトラブルの火種となりかねません。現状、雇用保険被保険者証を会社保管としている現場では、早急に業務フローを見直す必要があります。