
現状、雇用保険関係のお手続を社労士に外注せず、社内のご担当者様が行っている会社も多いのではないでしょうか?基本的なお手続の流れは分かっていても、時おり、イレギュラーなケースへの対応に頭を悩ませる場面もあるかもしれません。今号では、企業の雇用保険関係実務ご担当者様であれば確認しておきたい、「雇用保険適用業務 質疑応答集」をご紹介します。
目次
岩手労働局公開「質疑応答集」で、資格取得や育児休業給付の手続きに伴う「?」を解消
皆さんにご確認いただきたいのが、岩手労働局の職業安定部職業安定課が作成した「雇用保険適用業務 質疑応答集」です。雇用保険関係のお手続は多岐に渡る上、いざ実際に実務に取り掛かってみると、「こんな時はどうするんだろう」と悩むポイントがいくつもあります。このたび公開された質疑応答集では、日頃ハローワーク等の窓口に寄せられる質問とその回答がまとめられたもので、実務に携わる際の参考にしていただける資料となっています。質疑応答集に記載されている事例の一部を確認しましょう。
ケース① 被保険者番号が分からない
雇用保険被保険者証を紛失した等で、新たな職場での資格取得時に「被保険者番号が分からない」となるケースは多くあります。この場合、資格取得届の被保険者番号は空欄(電子申請のときは全て9を入力)とし、備考欄に前職の事業所名(複数有れば尚可、前職が派遣の場合は派遣元事業所名)を記入することになります。
ちなみに、雇用保険被保険者番号は離職後7年経過で失効となります。よって、「大昔に雇用保険に入っていたはずなんだけれど・・・」という場合には、雇用保険被保険者番号を記入せずに「新規」で届け出をすることになります。届出後、ハローワークでの確認で、被保険者番号が未だ失効していないことが発覚した場合、事業所宛に連絡が入りますので、被保険者となる従業員に職歴を確認することになります。
ケース② 資格取得や資格喪失の届け出をしたかどうか分からない
従業員の退職に伴い、雇用保険被保険者資格喪失の手続きをしようとした際、雇用保険被保険者証が見当たらない、被保険者番号も不明といったケースもあります。この場合、そもそも資格取得手続きがされていないことが予想されますが、まずは従業員の資格取得・喪失の状況を照会しましょう。
この場合、身分証を持参の上で「雇用保険適用事業所情報提供請求書」を管轄のハローワークへ提出します。子の請求により、雇用保険に加入中の被保険者一覧を取得することができます。電子申請では請求できませんので、注意が必要です。
ケース③ 事業所で初めて、育休取得者が生じる場合
小規模事業所を中心に、「会社で初めて育休取得者が出る」というタイミングで、社労士に手続き代行を依頼されるケースは多くあります。育児休業給付金の支給申請を初めて行うことに、ご不安を感じられる傾向にあるようです。
今回ご紹介している質疑応答集では、育児休業給付関連のQ&Aも掲載されています。ここでは、要件と支給申請に関わる記載内容を確認しておきましょう。
○ 対象となる被保険者の要件
1歳未満の子を養育するために育児休業を取得したときは、休業開始日前2年間に11日以上ある完全月が12ヶ月以上ある場合に、育児休業給付を受給できる可能性があります。期間を定めて雇用している場合は、子が1歳6ヶ月に達する日までの間に契約期間が満了することが明らかでないことが要件です。
○ 支給申請
出生時育児休業の申請は育児休業終了後に、育児休業の申請は休業開始時賃金登録のみのときは育児休業開始後、支給申請を伴うときは休業開始2ヶ月経過後となります。育児休業給付金の申請は原則として2ヶ月に一度となりますが、被保険者が希望する場合は1ヶ月毎に申請を行うことができます。
上記の他、育休中に就労した場合や退職した場合等のイレギュラーな事例に関わる考え方も記されています。
参考:岩手労働局「雇用保険適用業務 質疑応答集」
労働・社会保険関係手続きをもっとスムーズに!
雇用保険関連を含む労働保険手続きや、健康・厚生年金保険手続き等、従業員が加入する手続きには様々なものがあり、しかも各人の事情や状況によって複雑化することも珍しくありません。「こんな時はどうするんだろう」と疑問に思われた際には、今号でご紹介したような行政作成のマニュアルの活用や届出先への確認等をされるでしょうが、実務上のストレスを最小限に抑えることを目的として、社会保険労務士に手続きをお任せいただくのも得策です。また、大前提として、届出の添付資料となり得る出勤簿・賃金台帳の整備は必須であり、このあたりの対応には「ハーモス勤怠」のご活用がお勧めです。
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