勤怠打刻ファースト

育児中の従業員のシフト、時短勤務や残業免除のルールを確認

飲食店や小売店等を中心に、シフト勤務を原則とする職場は少なくないと思います。シフト勤務の場合、働き始めた当初はどのシフトにもまんべんなく対応できていた従業員でも、その後のライフステージの変化に応じて状況が変わってくることは多々あります。働き方に影響を与える変化の代表格として「出産・子育て」が挙げられますが、子育て中の従業員のシフトを巡っては、会社が対応に頭を悩ませたり、従業員間のわだかまりを生んだりすることも珍しくありません。今号では、育児中の従業員の労働時間にまつわる法律上の定めを総合的に解説すると共に、育児中の短時間勤務等においておさえておくべきポイントをご紹介します。

これが原則!育児・介護休業法上の育児中の従業員の労働時間規制

育児中の従業員から、「時短勤務をしたいんですが・・・」との申し出を受けて、対応に苦慮した経験のあるご担当者様も多いかもれません。ますます深刻化する少子高齢化に歯止めをかけるべく、近年、育児・介護休業法は改正を重ねられています。そして現在では、法の定めのもと、いずれの企業においても仕事と育児を両立しやすい職場環境の整備が目指されています。貴社の育児・介護休業規程は、直近の法改正に則したものでしょうか?万が一の際に慌てないよう、法律の定めを正しく理解し、自社に適用するルールを就業規則等に適切に規定しておかれることをお勧めします。

育児中の従業員の労働時間規制① 所定外労働の制限(残業免除)

小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が請求した場合、会社は所定外労働を免除しなければなりません。

対象となるのは、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者のうち、「日々雇用される労働者」を除く者です。ただし、労使協定を締結することにより、「継続雇用1年未満の労働者」「1週間の所定労働日数が2日以下の労働者」を適用除外とすることができます。

育児中の従業員の労働時間規制② 時間外労働の制限

小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が請求した場合、会社は、1か月について24時間、1年について150時間を超える時間外労働をさせてはいけません。

対象となるのは、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者のうち、「日々雇用される労働者」「継続雇用1年未満の労働者」「1週間の所定労働日数が2日以下の労働者」に該当しない者です。

育児中の従業員の労働時間規制③ 深夜業の制限

小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が請求した場合、会社は、深夜の時間帯に働かせてはいけません。

ただし、対象となるのは、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者であって、以下に該当しない者となります。
・日々雇用される労働者
・継続雇用1年未満の労働者
・1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
・所定労働時間の全部が深夜にある労働者
・深夜において子の保育ができる同居の家族がいる労働者
※深夜において子の保育ができる同居の家族とは、次の要件を満たしている者をいいます
・16歳以上であること
・深夜に就労していないこと(深夜における就労日数が1か月について3日以下の場合も含む。)
・負傷、疾病、心身の障害等により保育が困難でないこと
・産前・産後休業期間中でないこと

育児中の従業員の労働時間規制④ 短時間勤務制度

事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者に対して、1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を含む短時間勤務制度を講じなければなりません。
対象となるのは、3歳に満たない子を養育する労働者のうち、「日々雇用されるものでないこと」「1日の所定労働時間が6時間以下でないこと」「短時間勤務制度が適用される期間に現に育児休業(産後パパ育休を含む)をしていないこと」の要件を満たす者です。ただし、労使協定を締結することにより、「継続雇用1年未満の労働者」「1週間の所定労働日数が2日以下の労働者」「業務の性質等に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者」を適用除外とすることができます。

参考:厚生労働省「育児休業制度特設サイト

育児中の短時間労働制度にまつわる実務対応のポイント

前項の労働時間規制のうち、「④ 短時間勤務制度」について、実務上把握しておくべきポイントをさらに補足しておきましょう。

適用除外にできる「業務の性質等に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事」とは

労使協定を締結することによって短時間勤務制度の適用対象外とできる「業務の性質又は業務の実施体制に照らして、所定労働時間の短縮措置を講ずることが困難と認められる業務」とは、例えば、次に掲げるものが該当する場合があります。

イ 業務の性質に照らして、制度の対象とすることが困難と認められる業務
国際路線等に就航する航空機において従事する客室乗務員等の業務
ロ 業務の実施体制に照らして、制度の対象とすることが困難と認められる業務
労働者数が少ない事業所において、当該業務に従事しうる労働者数が著しく少ない業務
ハ 業務の性質及び実施体制に照らして、制度の対象とすることが困難と認められる業務
(イ) 流れ作業方式による製造業務であって、短時間勤務の者を勤務体制に組み込むことが困難な業務
(ロ) 交替制勤務による製造業務であって、短時間勤務の者を勤務体制に組み込むことが困難な業務
(ハ) 個人ごとに担当する企業、地域等が厳密に分担されていて、他の労働者では代替が困難な営業業務

ただし、上記の業務は例示であり、これら以外は困難と認められる業務に該当しないものではなく、また、これらであれば困難と認められる業務に該当するものではないことに留意する必要があります。

出典:厚生労働省「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針

<短時間勤務が困難な労働者に対する代替措置を検討しておく必要あり>
事業主は、業務の性質等に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者に対し、短時間勤務制度の代替措置として以下のいずれか1つ以上の制度を設ける必要があります。

・育児休業に関する制度に準ずる措置
・フレックスタイム制
・始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ(時差出勤の制度)
・保育施設の設置・運営等
・テレワーク等

シフト勤務の店舗等では、実務上、時差出勤制度を導入するケースが多いようです。

2025年10月以降は、「柔軟な働き方を実現するための措置」として3歳以降の短時間勤務を認める現場も

2025年10月施行の改正育児・介護休業法により、事業主には3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に対して、「柔軟な働き方を実現するための措置」を講じることが義務づけられました。
具体的には、職場の声を把握した上で、次の5つの中から2つ以上の措置を選択して講じなければなりません。

・始業・終業時刻の変更(時差出勤制度)
・フレックスタイム制
・テレワーク等
・短時間勤務制度
・新たな休暇の付与
・保育施設・介護施設の設置運営または便宜の供与

他社では実際にどのような選択が多いのかというと、「①始業時刻等の変更」「⑤短時間勤務制度」の組み合わせを選択するパターンが43.4%と、全体の4割超を占めているようです。さらに、「①始業時刻等の変更」「⑤短時間勤務制度」「②テレワーク」から2つを選択するパターンが大半となっており、これらの対応には既存の社内制度を育児分野の両立支援に活用するケースが多く見受けられます。

関連記事:『2025年4月・10月施行!改正育児・介護休業法|他社の対応状況は?

原則6時間の短時間勤務を認めなければならないが、就業時間帯は会社が決めることができる

育児中の労働者の短時間勤務については、法律上、申し出があった場合に原則6時間勤務にすることを義務付けているに過ぎません。つまり、育児中の労働者の希望通りの労働時間帯の就業を約束する制度ではない、ということです。就業規則等に原則的な短時間勤務のシフトパターンを規定しておくことで透明性と公平性が担保されます。

育児時短就業給付金の申請をお忘れなく

2025年4月からの新制度として、育児時短就業給付金が創設されました。本給付金は、2歳未満の子を養育する雇用保険の被保険者で一定の要件を満たす方に、原則短時間勤務中の賃金の10%相当額の育児時短就業給付金が支給される制度です。

関連記事:『複雑な育児休業等給付手続きを総まとめ!2025年4月新設の給付金支給申請手続きも要確認

育児・介護休業法上の諸制度を原則として、自社のルール検討及び労働者との丁寧な話し合いを

このように、育児中の労働者に対する育児・介護休業法上の労働時間規制は多岐に渡ります。こうした法定の制度を原則として、具体的に自社ではどのような対応をするのかを一つひとつ細かく検討し、定めておく必要があります。制度運用にあたっては、育児中の労働者はもちろん、その他の労働者の状況も考慮しながらシフトを組んでいくことが肝心です。会社のルールでガチガチに決めてしまっては育児中の労働者の離職を誘発することになりかねませんが、かといって育児中の労働者ばかりを優先してしまってはその他の労働者の不満、モチベーション低下につながります。このあたりの取扱いは非常にデリケートな問題であり、現場ごとに解決策が異なってくる部分ですが、肝心なのは労使間、従業員間で相互に思いやりをもって、譲歩しながら、妥協点を探っていく姿勢であると感じられます。
また、当然のことながら、今号で解説した育児中の労働時間規制は男性労働者も適用対象となります。くれぐれも、男性だからという理由で申請を却下したり、制度を利用したことで不合理な取扱いをしたりすることのないようにしましょう。
育児中の労働者の労働時間についてのご相談は、社会保険労務士までお気軽にお寄せください!