勤怠打刻ファースト

新年度に見直したい!アルバイト雇用時の労働条件明示ルール

年度末は学生アルバイトの入れ替わり時期ということで、新年度に向けてアルバイトの募集・採用業務に注力する現場も多いのではないでしょうか?人を新しく雇入れるということで、肝心なのは「労務管理」です。アルバイトの労務管理は、正社員と比較するとおざなりになりがちですが、企業においては正規・非正規それぞれに対して必要な対応を講じることが求められます。4月から始まる「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンを契機に、アルバイト雇用に伴い注意すべき労務管理のポイント、雇入れ時に対応必須となる労働条件明示のルールをおさえましょう。

アルバイトの労務管理で留意すべきポイント

アルバイト雇用に関わるご相談には、企業側から寄せられるアルバイトの問題行動についてと同等に、学生アルバイトから寄せられる労基法違反が疑われる内容のものが多くあります。いわゆる「ブラックバイト」とは、「学生に対し、学生生活に支障をきたすような違法性のある働き方」を指しますが、個人的には特にコロナ禍以降増加傾向にあると実感しています。特徴としては、労働環境が整備されていない、就労に際し不当な扱いをする、学生に対して学業との両立に配慮しない等が挙げられ、学生アルバイトを巡るトラブルは社会的に問題視されています。

アルバイトの労働条件

厚生労働省が例年4月から7月にかけて実施する「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンでは、学生アルバイト雇入れ時の重点確認事項として以下の5項目を挙げています。御社では、どの程度徹底できているでしょうか?

◎ アルバイトを雇うとき、書面による労働条件の明示が必要です
◎ 学業とアルバイトが両立できるような勤務時間のシフトを適切に設定しましょう
◎ アルバイトに、商品を強制的に購入させることはできません
また、一方的にその代金を賃金から控除することもできません

◎ アルバイトも労働時間を適正に把握する必要があります
◎ アルバイトの遅刻や欠勤等に対して、あらかじめ損害賠償額等を定めることや
労働基準法に違反する減給制裁はできません

参考:厚生労働省『令和7年度「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンを全国で実施します
関連記事:『毎年恒例「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンが始まります

学生アルバイトにも労働条件の通知が必要です

様々な企業の実情を拝見していると「正社員には労働条件通知書(雇用契約書)を交付しているが、アルバイトには渡していない」という現場は珍しくないようです。また、交付はしていても、内容が不十分なケースは多々あります。
アルバイトだからと言って、「労働契約が口約束で良い」というわけにはいきません。以下の項目については、原則書面(労働者が希望した場合にはメール等でも可)で明示しなければなりません。

① 労働契約の期間について
② 更新の有無、更新上限、更新する場合の判断基準などについて
③ 就業場所及び業務内容、これらの変更の範囲について
④ 始業終業時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、交替のローテーションなどについて
⑤ 賃金の決め方、計算と支払の方法、支払日について
⑥ 昇給、賞与、退職金の有無
⑦ 退職時・解雇時の決まりについて
⑧ 無期転換申込に関する事項及び無期転換後の労働条件について(有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合)
⑨ 雇用管理の改善等に関する事項に係.る相談窓口

短時間・有期雇用労働者に対する労働条件通知書(雇用契約書)では、明示すべき項目が正社員とは一部異なります。具体的な項目は以下の通りです。
・ 短時間・有期雇用労働者の雇い入れに際して、「昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」「相談窓口」を文書の交付等により明示しなければならない(パートタイム労働法)
・ 有期雇用労働者の雇い入れ・契約更新に際して「更新上限の有無と内容」、無期転換申込権が発生する契約の更新時に「無期転換の申込機会」「無期転換後の労働条件」を文書の交付等により明示しなければならない(労働基準法施行規則)
既存のひな型が法定の明示項目を網羅しているかを、今一度ご確認ください。

参考:厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法の概要
関連記事:「2024年度から変わる労働条件明示ルール!すべての企業は労働条件通知書の点検を

今一度、学生アルバイトの労務管理を見直しましょう!

正社員と比較するとなかなか徹底されにくい学生アルバイトの労務管理ですが、パートタイム・有期雇用労働法や労基法上の年少者への配慮等、細かく見ていくと、正社員以上に慎重な対応が求められます。また、労働条件明示ルールについても、2024年4月の改正で有期労働契約における明示事項が追加されています。現場においては、もれなく対応できるようにしましょう。
「どうせ学生だからよく分からないだろう」と考えられがちですが、昨今、弊事務所寄せられるご相談の中には、学生アルバイトやその保護者から寄せられるものが増加傾向にあり、労働者側の意識は確実に高まりをみせているなと実感します。雇用主が、「知らなかった」では済まされません。会社側が正しく法律を理解し、適切な対応を心がける必要があります。