「給与のデジタル払い」については、先日、別記事にて3社目となる指定資金移動業者の決定をご紹介したばかりです。その後、2025年4月4日付で4社目の資金移動業者が指定され、本決定をもって現在申請中の資金移動業者すべてが指定を受けました。厚生労働省は、給与デジタル払いの導入率向上に向け、専用ホームページから情報提供を行っています。
目次
4社目の指定資金移動業者は「au PAY」
2025年4月4日、給与のデジタル払いにおける指定資金移動業者として、auペイメント株式会社(au PAY)が新たに指定を受けました。指定に伴い、スマホ決済「au PAY」で給与受け取りが可能な給与デジタル払いのサービスとして「au PAY 給与受取」の提供が開始され、労働者指定口座残高の受け入れ上限額は「10万円」となっています。KDDIおよびauフィナンシャルグループをはじめとするKDDIグループ各社(以下 KDDIグループ各社)では、2025年5月以降分の給与支払いから順次、希望する従業員を対象に、au PAYでの給与デジタル払いを導入する予定です。
参考:厚生労働省「資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について_指定資金移動業者一覧」
「給与のデジタル払い」 使用者・労働者別リーフレットを確認
2023年4月の解禁以降、給与のデジタル払いに対応する指定資金移動業者が着々と増える一方、すでに別記事でも解説した通り、企業における導入は進まぬ現状があります。こうした背景を受け、厚生労働省は「資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について」を拡充し、労使に対する情報提供強化を図っています。
使用者向けリーフレットには、給与のデジタル払い導入に向けた手続きの解説
給与のデジタル払いの導入・実施に際しては所定の手順を踏む必要があり、このあたりが企業における導入の妨げになっているように感じられます。現場から寄せられる「何をすれば良いのか?」の声を解消すべく、厚生労働省はリーフレットを公表しています。リーフレットでは、給与のデジタル払い導入に向けた、以下6つのステップを解説しています。
①厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者(指定資金移動業者)の確認
②導入する指定資金移動業者のサービスの検討
③労使協定の締結等
④労働者への説明
⑤労働者の個別の同意取得
⑥賃金支払いの事務処理の確認・実施
参考:厚生労働省リーフレット「【使用者向け】賃金のデジタル払いを導入するにあたって必要な手続き」
労働者向けに、給与のデジタル払いに係る留意事項を解説
給与のデジタル払いは、職場で導入が決まったとしても、同意しなければ各人への適用はありません。企業は労働者に対して給与のデジタル払いを強制できず、労働者が希望しない場合は従来通り銀行口座などで賃金を受け取ることができます。そのために、労働者自身が給与のデジタル払いに係るメリット・デメリットを十分に理解し、一人ひとりが判断する必要があります。厚生労働省の労働者向けリーフレットには、給与のデジタル払いについて、労働者が理解しておくべき以下のような留意点が解説されています。
・ 賃金受取口座には受入上限額が設定されており、超過分については指定代替口座へ自動的に出金されます。
指定代替口座への自動出金にかかる手数料は、労働者自身の負担となる可能性があります。
・ 口座残高の現金化(払い出し)方法や手数料については各自で確認しておく必要があります。
・ 不正取引や指定資金移動業者の破たん時等、各自での対応が必要になることがあります。
参考:厚生労働省リーフレット「【労働者向け】賃金のデジタル払いを導入するにあたって必要な手続き」
「給与のデジタル払い」、御社におけるニーズは?
「給与のデジタル払い」については、現状導入していない企業がほとんどである一方、巷ではキャッシュレス決済が着実に進んでいる印象です。こうした状況に鑑み、今後は企業における給与の支払い方法にも少しずつ変化があるものと予想します。
給与のデジタル払いについて、御社ではどのようなご意見が挙がっているでしょうか?新たな給与支払方法の導入は、従業員にとっての利便性向上につながる一方、労働者に対して無条件に適用することはできません。現場においては、折を見て労働者の声に耳を傾け、導入有無の検討に取り組んでまいりましょう。