2019年4月1日より「労働時間の客観的把握」が使用者の義務となって以降、各事業所において従業員の始業・終業時刻や休憩時間を記録に残すという作業がだいぶ定着しつつあるように思います。しかしながら、この「記録」が果たして実態に則したものかといえば、残念ながらそうとは言えない状況にあるようです。労働時間管理上、ついやりがちな「丸め処理」に関しては、厚生労働省が2024年9月に注意喚起のリーフレットを公開しています。労基法違反にならないよう、各現場において適正な労働時間把握の実施に努めましょう。
目次
労働時間の「丸め処理」 よくある労基法違反の事例
原則として、始業・終業時刻は1分単位まで正確に記録し、この記録に基づいて給与支払いをしなければなりません。ところが、実務上、「実際の労働時間を正確に記録できていない」「記録があってもこれに基づいて給与計算がされていない」といったケースも少なくありません。
厚生労働省リーフレットに掲載された、労働基準法違反の例を確認しましょう。
出典:厚生労働省「労働時間を適正に把握し正しく賃金を支払いましょう」
労働時間の「丸め処理」が可能となるケースを正しく理解しましょう
労働時間の「丸め処理」は労基法上すべきではありませんが、例外的に可能となる場合もあります。誤解の無いよう正しく理解し、就労実態に応じて適用の有無を検討しましょう。
1.労働時間の記録と就業実態に相違がある場合
例えば、「満員電車を回避するために、毎日始業時刻の1時間前に出勤して、ゆっくり朝刊を読みながら始業時刻を待つ」という場合、「出勤時刻=始業時刻」と考えるのには問題がありそうです。また、「所定の終業時刻を過ぎており、明らかにその日の仕事を終えているにもかかわらず退勤の打刻をしない」様な場合も、本来は支払い不要な残業代が生じている可能性が高いと言えます。
始業・終業の勤怠記録と就業実態が乖離しているケースでは、実態に則した給与計算がされるのが理想です。ハーモス勤怠を始めとする勤怠管理システムの端数処理機能は、このような例外的な事例に対応するために備わっています。趣旨をご理解の上、記録と実態の乖離がなるべく生じることのないよう従業員への指導を行いながら、正しく端数処理機能をご活用いただければと思います。
参考:ハーモス勤怠FAQ「端数処理ではどのように丸められる?」
2.1ヶ月における時間外労働、休日労働および深夜業の各時間数の合計に1時間未満の端数がある場合
残業時間等の端数処理に関しては、行政通達(昭和63年3月14日・基発第150号)において例外的に、1ヶ月単位での端数処理が認められています。具体的には、1ヶ月における時間外労働、休日労働および深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げる方法です。本端数処理は、常に労働者の不利となるものではないこと、事務簡便を目的に適うことから認められています。
3.1日の労働時間について「切り上げ処理」をする場合
1日の労働時間については、一定時間に満たない時間を切り上げた上で、その分の賃金を支払うことは、問題ありません。もちろん、日々の勤怠は1分単位で正確に把握する必要がありますが、この記録を踏まえつつ、給与計算事務の簡素化のために、「残業代は30分単位で計算するもの」とし、30分に満たない10分、20分の残業時間を30分に切り上げることは認められます。
ただし、「切り捨て」に関しては認められません。「30分以上残業しないと賃金が出ない」という取扱は違法です。
勤怠管理と給与計算はワンセットで、適正に!
御社では、現状、正しく勤怠管理ができているでしょうか?まずは「正確な勤怠記録をとること」から始まりますが、記録があっても客観性に欠けるならやり方を見直さなければなりませんし、せっかく勤怠管理システムを導入しても「所定の始業・終業時刻を手入力するだけ」ならば勤怠管理の意味がありません。また、正確な勤怠記録があっても、誤った「丸め処理」によって未払い賃金が生じていれば大問題です。
「勤怠管理の趣旨を正しく理解した上で、正確に勤怠記録をとり、適正なルールの則り賃金を支払う」というサイクルを、ハーモス勤怠で作り上げましょう!