勤怠打刻ファースト

各社で進む、LGBT支援に向けた就労体制整備|「10人に1人」へのケアは労務管理の必須項目に

2018年以降、LGBT理解への積極的な取り組みを講じている凸版印刷株式会社が、配偶者を持つ従業員に支給される慶弔休暇、住宅補助、都市手当、結婚祝い品等の諸手当について、同性パートナーや事実婚パートナーを有する従業員に対しても適用するよう社内規程の改定を行いました。
昨今、各社で進むLGBT支援。今号では、その必要性と企業における具体的な取り組み事例を解説します。

身の回りの「10人に1人」がLGBTであると考えて

既にご存じの方も多いと思いますが、LGBTとは、Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性別越境者)といった「セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)の総称」です。
性といえば「男性」「女性」の2つの切り口で考えられ、身体の性と心の性(性自認)が一致し、さらに好きになる性(性的指向)は異性であるというのが一般的とされていますが、身体の性と心の性(性自認)、さらに好きになる性(性的指向)の組み合わせは実際には何通りもあり、一括りにできるものではありません。

出典:TOKYO RAINBOW PRIDE「About LGBT

日本におけるLGBTの割合については「13人に1人」とも「11人に1人」とも言われ、数値に若干のバラつきはあるものの、ざっくり「10人に1人」程度と把握することができます。たとえご本人がオープンにしていなくても、皆さんの身の回りにも必ずLGBTとされる方がいらっしゃることを心に留め、十分な理解と配慮に努める必要があります。

企業におけるLGBT就労支援 「個人」への配慮ではなく「組織」として体制整備を

LGBTとされる方の就労においては、様々な難しさが付いて回ります。多くのLGBT当事者たちは、自身の性的指向や性自認を知られることで差別やハラスメントを受ける可能性があることから、周囲への積極的なカミングアウトを控える傾向にあります。これにより、職場では本来の自分自身を隠すかのように振る舞わなければならず、それ自体が苦痛になる、常に緊張状態にありストレスを抱えやすい、プライベートの話ができずに人間関係を築きにくくなり、職場での孤立や転職につながりやすいといった困難を抱えることになります。

こうした背景から、今般、企業においては「多様性を受け入れる職場環境整備」として、LGBT関連への取り組みが各所で進められています。冒頭で触れた凸版印刷株式会社の例もそのひとつです。
ここでは、企業における先進的な取り組み事例として、株式会社ラッシュジャパンの事例をご紹介しましょう。

株式会社ラッシュジャパン(製造・小売)の取り組み

株式会社ラッシュジャパン

出典:独立行政法人労働政策研究所・研修機構「LGBTの就労に関する企業等の取組事例

同社においては、LGBTの方々に向けた就労環境整備について、幅広い取り組みが網羅されています。トイレ等の施設利用については、一見すると様々混乱がありそうですが、社員の間では特段異論等は挙がっていないとのこと。本社ビルや工場では多目的トイレの設置がなくとも、問題なく対応できているそうです。社員一人ひとりがLGBTを正しく理解し、受け入れている証拠であるといえます。

あえてLGBTの社員の存在を把握せずとも対応を

LGBTの就労に関する企業等の取組事例」の資料では、各社の取組みと併せてLGBT社員の有無についての記載欄があります。この点、万全な就労体制の整備をしているいずれの会社においても、あえてLGBTが会社にどのくらいいるのかを把握していません。現場では、「LGBTとして区別すること自体に違和感がある」、「あえてLGBTとされる方々をカウントすること自体がおかしい」といった認識が広がっているそうです。
これからLGBT対応に取り組む企業においても、「会社にいるから、必要に迫られて」ではなく、「多様な人材を雇用する企業の、当たり前の責任として」のスタンスで施策を検討していきましょう。

LGBT支援に向けた施策の検討・実施、研修の開催は、労務管理の専門家である社会保険労務士をご活用ください。労務相談はこちら