子育て世帯への経済的支援拡充を目的とする「子ども・子育て支援金制度」が2024年6月5日に成立し、2026年4月よりスタートします。制度の恩恵を直接的に受けることのない、子どもを持たない世帯も支援金の徴収対象となることから、「独身税」とも揶揄される本支援金について、制度導入の背景や実際の保険料額等を解説します。
目次
社会全体で子育てを支えるための体制作りとなる「子ども・子育て支援金制度」
「子ども・子育て支援金制度」とは、子育て世代に対する制度拡充の財源確保のために、医療保険の被保険者及び企業から徴収する保険料とあわせて支援金を徴収する制度のことです。2026年度から向こう3年の間に段階的な制度構築が予定されており、2026年度に6000億円程度、2027年度に8000億円程度、2028年度に1兆円程度の徴収が見込まれています。
被保険者一人あたりの支援金額は?
子ども・子育て支援金の具体的な負担額について、具体的に見ていきましょう。以下は、こども家庭庁が公開する、医療保険加入者一人当たりの平均月額です。
各人の具体的な拠出額は、加入する医療保険制度、所得や世帯の状況等によって異なります。上図より、2028年度の想定では、「全医療保険制度加入者一人当たり平均で月額450円程度」「医療保険制度別にみると、健康保険組合や協会けんぽなどの被用者保険で月額500円程度、国民健康保険で月額400円程度、後期高齢者医療制度で月額350円程度」となっています。ただし、この金額はあくまで「平均」となりますので、当然、年収に応じて支援金額は変動します。また、被用者保険の年収別の支援金額については、数年後の賃金水準によることから、現時点で明確な数字を算出することは困難と言わざるを得ません。参考までに、2028年度の年収別支援金額については、年収200万円の場合350円、同400万円の場合650円、同600万円の場合1,000円、同800万円の場合1,350円、同1,000万円の場合1,650円との試算があるそうです。
なお、この金額は事業主負担分を除いた被保険者拠出分であり、被用者保険では別途事業主からの拠出もあります。
医療保険の被保険者等が拠出した支援金は、何に使われる?
支援金は、児童手当の拡充や妊婦のための支援給付、こども誰でも通園制度、出生後休業支援給付・育児時短就業給付、国民年金第1号被保険者の保険料免除措置等への活用が想定されています。もちろん、子ども・子育て支援金を財源に実施する施策に関しては、国の特別会計における収入・支出の見える化、施策の効果検証が実施されることとなっています。
子ども・子育て支援金は、本当に「独身税」と言えるのか?
さて、冒頭でも触れたとおり、子ども・子育て支援金制度は、「独身税」とも揶揄される、賛否両論のある制度と言われています。確かに、「支払っても恩恵を受けられない制度」であれば、批判があっても仕方ないかもしれません。しかしながら、日本全体にとってみれば、少子化・人口減少の問題は経済全体、地域社会全体の重要課題であり、子どものいない方にとっても決して無関係とは言えない問題です。個人単位では直接的に支援金の恩恵を受けないとしても、積極的な少子化対策を講じることで、少子化・人口減少傾向が改善し、結果的に経済・社会システムの維持が実現するのであれば、それは子の有無を問わずすべての国民にとって実り多いこととなります。また、企業においても、少子化対策に注力することは、労働力確保及び国内市場維持を考える上で有益です。
政府は、金銭面での子育て世代の支援と併せて、ライフプランの多様化や結婚観の変化に対応した施策、若い世代の所得・雇用対策、働き方改革等にも総合的に取り組むことで、深刻化する少子高齢化問題に対応していくこととしています。若年人口が急激に減少し始める2030年代を目前に、今こそ、社会全体で少子化に歯止めをかける必要があるのです。
参考:こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」