実務上、膨大な数の社会保険手続きをこなす中では、手続きを終えた後に何かしらの誤りに気が付くこともあるかもしれません。万が一、社会保険手続き上の誤りが発覚した際には、早めの対応が不可欠です。これから迎える入社シーズンを目前に、社会保険の資格取得日の考え方と、資格取得日に誤りがあった場合の訂正方法についておさえておきましょう。
目次
社会保険の「資格取得日」とはいつなのか?
社会保険の被保険者資格取得日については、実務上、意外と頭を悩ませるポイントのひとつではないでしょうか。例えば、雇用契約書上の雇い入れ日は4月1日、4月1日に入社式があり、4月2、3日は土日で休み、4月4日から勤務開始となる場合、被保険者資格の取得はいつになるでしょうか?
被保険者の資格取得日は、労働条件通知書に記載の雇い入れ日に合わせる
通常、「入社日」と「社会保険被保険者資格取得日」は同一です。それでは、いつを「入社日」と考えるべきかというと、労働条件通知書や雇用契約書に記載の「雇い入れ日」とするのが自然でしょう。
上記の場合、実際の勤務開始は4月4日ですが、契約上は4月1日の雇い入れとなっているので、資格取得日は「4月1日」とするのが適切です。
試用期間中も、社会保険に加入義務あり
ちなみに、試用期間中の労働者であっても、要件を満たす限りは、雇用保険、健康保険・厚生年金保険の資格取得手続きが必要です。もっとも、健康保険・厚生年金保険では、被保険者とならない者の要件として「2ヵ月以内の期間を定めて使用される人」とあることから、しばしば「正社員として雇い入れた者についても、試用期間中は2ヶ月以内の有期雇用とする」という運用を散見しますが、こうした扱いは適切ではありません。なぜかと言うと、2022年10月以降、雇用期間が2ヵ月以内であっても、以下のいずれかに該当する方は雇用期間の当初から社会保険の加入対象となる旨の改正法が施行されているからです。
〇 就業規則、雇用契約書等において、その契約が「更新される旨」、または「更新される場合がある旨」が明示されている場合
〇 同一事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が、更新等により最初の雇用契約の期間を超えて雇用された実績がある場合
参考:日本年金機構「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の施行(令和4年10月施行分)に伴う事務の取扱いに関するQ&A集」
社会保険 被保険者資格取得日の訂正方法
社会保険の被保険者資格取得手続きで、資格取得日を誤ってしまった際の対応方法を確認しておきましょう。
雇用保険 「雇用保険被保険者資格取得・喪失等届訂正・取消願」
「雇用保険被保険者資格取得届訂正・取消願」とは、ハローワークに提出した雇用保険被保険者資格取得届の内容に誤りがあった際、その内容を訂正したり取消したりするために提出する書類です。様式は、以下よりご確認いただけます。
参考:東京ハローワーク「被保険者の取得・喪失について訂正・取消をする場合」
「雇用保険被保険者資格取得届訂正・取消願」に必要事項を記入の上、正しい入社年月日が分かる資料(賃金台帳及び出勤簿、労働者名簿、雇用契約書又は雇入通知書等)を添付して、郵送もしくは窓口持参により事業所を管轄するハローワークに提出します。
健康保険・厚生年金保険 資格取得届の訂正
健康保険・厚生年金保険の届出様式には「訂正届」はありませんが、すでに届け出た資格取得届と同じ書式に必要事項を追記して、それを訂正届として提出することで対応します。具体的なイメージは、以下の通りです。
出典:全国健康保険協会「令和6年度事務担当者研修」
以下の要領で、訂正届を作成します。
・ 当初提出した資格取得届の写し等を準備
・ 様式の上部に「訂正」を朱書き
・ 取得(該当)年月日欄に誤った資格取得年月日を朱書きし、正しい資格取得年月日を黒字で記入
・ 備考欄に訂正理由(取得日記入誤り)を記入
作成した訂正届は、管轄の年金事務センター宛に郵送もしくは窓口持参にて提出します。その際、雇用保険同様、正しい入社年月日が分かる資料(賃金台帳及び出勤簿、労働者名簿、雇用契約書又は雇入通知書等)の添付が必要です。
放置は厳禁!社会保険手続きで誤りがあった場合、事後の迅速な対応が必要です
今号では、社会保険の被保険者資格取得日誤りを例に、事後の訂正方法について解説しました。社会保険関連の諸手続きでは、資格取得日に関わらず様々な誤りが想定されますが、いずれのケースにも共通して言えるのは「迅速対応」が重要だということです。社会保険手続き上の誤りは、被保険者への将来的な給付等に影響を及ぼします。どのような誤りにも訂正の術はありますので、まずは社会保険労務士へご相談ください。