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2022年10月からの社会保険の適用範囲拡大~今から考えるべきポイント

パート社員の社会保険加入の要件緩和について、既に社員が500人超の会社では始まっていますが、2022年10月からは100人超の会社も適用となります。これにより会社の社会保険料の負担は増えることになりますし、パート社員の扶養問題も生じてきます。そこで、パート社員の社会保険加入拡大に備えて、会社として考えなければいけないポイントを紹介します。

2022年10月から社会保険が適用されるパート社員

社員が100人超の会社は、2022年10月から以下の要件を満たして働いているパート社員を社会保険に加入させることが義務となります。

パート社員が、社会保険に加入するメリット・デメリット

社会保険に加入するメリットは、厚生年金保険と健康保険の被保険者になるということです。厚生年金保険に加入することで65歳以降両方の年金制度から年金が支給されます。また障害を負った場合、国民年金より手厚い障害厚生年金や軽い障害の場合には、障害手当金もあり安心です。

健康保険に関しては、被保険者になることで傷病手当金の対象となります。傷病手当金は、私傷病で会社を休まざるを得なくなったときに休業4日目からお給料の日額(正確には標準報酬日額)の約3分の2が最大1年半支給されるという制度です。病気やケガのために生活費の心配をしなくてもよいので助かります。

社会保険加入のデメリットは、保険料を負担しなければならないことです。今まで配偶者の扶養になっていた方は、保険料を払う必要はありませんでした。ところが、社会保険に加入することで、お給料の約15%が厚生年金保険料と健康保険料で徴収されます。さらに、配偶者の扶養から外れることにより配偶者の税金が増える可能性があります。

会社として考えるポイント

パート社員の社会保険加入に際して大きな問題は、扶養になるかならないかです。それに関しては、大きく2つの考え方があります

1つ目は、なるべく社会保険に加入させる考え方です。社会保険に加入させるために現在要件に合っている人と合っていない人を区別します。その上で要件に合っている人に対して、このままでは扶養から外れて社会保険に加入しなければならないことを説明して、扶養から外れても構わないか確認をします。配偶者の扶養のままで働きたいと考えてるパート社員には、加入を無理強いするのではなく、加入しなくても済むように労働時間を調整して賃金額を要件に合わないようにします。

また、扶養から外れてもよいという方には、賃金も増えますのでもっと働いてもらいましょう。実は、今までと同じ労働時間だと社会保険料の負担や配偶者控除を受けられなくなるため、実質の賃金額は減少します。そこで、その分を補うために頑張って働いてもらうことの説明が必要となります。そうすると扶養から外れたくない人の労働時間減少分を補うことができます。

2つ目は、中小企業にとって社会保険料は大きな負担となるので、すべてのパート社員を要件に当てはまらないようにすることです。扶養の範囲内で働いている方は、そのまま要件に当てはまらないように働き方を変えてもらいます。しかし、扶養に関係のないパート社員は、もっと働きたいのにと会社を辞めるかもしれません。その場合にはよく話し合って、希望者だけ新たに社会保険に加入してもらい頑張って働いてもらうことになるでしょう。

社会保険加入を機にパート社員のモチベーションアップ

社会保険加入を契機にパート社員のモチベーションアップを図ることができます。そのためには、社会保険加入のメリットを伝え、会社がその保険料を半分負担していること(実はここをきちんと伝えることが肝要です)、そして今後はより一層仕事に邁進してもらうことを強く話しておくべきでしょう。

また、これを機に頑張っている人を評価する制度を作ることも重要です。正社員には、評価制度があるが、パート社員にはないという会社は多いものです。実は、正社員よりもパート社員の評価制度のほうが、効果が上がりやすいのです。正社員と比べてパート社員は有期雇用のため少しでも長く働きたいと思えば評価を気にして頑張るものです。反対に正社員は無期ですので、評価を上げなくても定年まで働けます。パート社員は、評価が悪ければ次回の契約更新はありません。その違いがパート社員の評価制度の効果が高い理由です。正社員より簡単な評価制度でよいので、一度ぜひ考えてみてください。

まとめ_早めの準備と真摯な対応を

10月には、まだまだ時間があると思っても、パート社員一人一人話し合うことは大変です。一人一度で済めば問題ありませんが、二度三度と話し合う方もいるでしょう。パート社員の生活が懸かっていますので、会社としても真摯に話し合いにのぞみ、決して会社の言い分に終始しないことです。「最終的に会社の方針に従ってもらう」と半ば強制的に働き方を変更した場合、トラブルになる可能性があります。ここは、なるべく相手の希望に沿うように働き方を考えることが重要です。