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新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金支給|対象の適否をケーススタディ

依然として拡大の一途をたどる、新型コロナウイルス感染症。日々の新規感染者数は全国的に増加傾向にあり、企業においては、従業員の感染に伴う対応に苦慮する場面が増えているものと思われます。今号では、新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金支給のQ&Aをもとに、対象となる例、ならない例を確認しましょう。

そもそも傷病手当金とは?

本題に入る前に、まずは傷病手当金がどういったものかを理解しておきましょう。傷病手当金とは、病気やケガで療養が必要になり働けなくなった際、以下の条件すべてを満たす場合に支給される健康保険の手当です。

✔ 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
✔ 仕事に就くことができないこと
✔ 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと

支給額は「直近12ヵ月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額」で、被保険者期間が12ヵ月より短い方の場合は以下のいずれか低い額が算定の基礎となります。

  1. 当該被保険者の被保険者期間における標準報酬月額の平均額
  2. 当該被保険者の属する保険者の標準報酬月額の平均額

傷病手当金が支給される期間は「支給開始した日から最長1年6ヵ月」で、現状、復職した期間等も通算されることになっています。この点に関しては、目下「傷病手当金が実際に支給された期間を通算して1年6ヵ月」を経過した時点まで支給する仕組みへの見直しが検討されているところです(2020年12月25日時点)。

参考:
協会けんぽ「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
厚生労働省「第136回社会保障審議会医療保険部会 資料_資料3 議論の整理(案)

新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金支給、ポイントは「被保険者自身の健康状態で、労務不能であるかどうか」

傷病手当金は、新型コロナウイルス感染症でも支給申請が可能です。以下のQ&A抜粋の通り、「はっきりと陽性と判明したわけではない」「自宅療養期間がある」といったケースにも柔軟に判断されますが、一方で「被保険者以外(他の従業員や家族等)の感染により働けない期間が生じた場合」は対象外となります。

被保険者自身の体調や感染により労務提供できなかった期間は支給対象となり得る

Q.被保険者には自覚症状はないものの、検査の結果、「新型コロナウイルス陽性」と判定され、療養のため労務に服することができない場合、傷病手当金は支給されるのか。

A.傷病手当金の支給対象となりうる。

Q.被保険者が発熱などの自覚症状があるため自宅療養を行っていた期間については、労務に服することができなかった期間に該当するのか。

A.医師が診察の結果、被保険者の既往の状態を推測して初診日前に労務不能の状態であったと認め、意見書に記載した場合には、初診日前の期間についても労務不能期間となり得ることとしている。
今般の新型コロナウイルス感染症の相談・受診の目安として、

やむを得ない理由により医療機関への受診を行わず、医師の意見書を添付できない場合には、支給申請書にその旨を記載するとともに、事業主からの当該期間、被保険者が療養のため労務に服さなかった旨を証明する書類を添付すること等により、保険者において労務不能と認められる場合、傷病手当金を支給する。

使用者の判断で労働者を休ませる場合、休業手当の支払いが必要な場合も

Q.事業所内で新型コロナウイルス感染症に感染した者が発生したこと等により、事業所全体が休業し、労務を行っていない期間については、傷病手当金は支給されるのか。

A.傷病手当金は、労働者の業務災害以外の理由による疾病、負傷等の療養のため、被保険者が労務に服することができないときに給付されるものであるため、被保険者自身が労務不能と認められない限り、傷病手当金は支給されない。

Q.本人には自覚症状がないものの、家族が感染し濃厚接触者になった等の事由において、本人が休暇を取得した場合には傷病手当金は支給されるのか。

A.傷病手当金は、労働者の業務災害以外の理由による疾病、負傷等の療養のため、被保険者が労務に服することができないときに給付されるものであるため、被保険者自身が労務不能と認められない限り、傷病手当金は支給されない。

なお、法律等に基づかない使用者の独自の判断により労働者に休業を命じる場合には、使用者の責に帰すべき事由による休業として労働基準法に基づき、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払う必要がありますのでご注意ください。

出典:協会けんぽ「新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給について

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