2026年度より、健康保険の被扶養者認定における「年間収入の取扱い」に変更があります。社会保険手続きを担当する実務担当者にとっては、重要な変更です。厚生労働省が公表した「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて」、及びQ&Aより、概要を確認しましょう。
目次
被扶養者の年間収入を「労働契約の内容に基づく賃金」で判定
現行の社会保険制度では、被扶養者となる方の年間収入について、その方の過去の収入、現時点の収入または将来の収入の見込み等に鑑み、「今後1年間の収入の見込み」により判定しています。この点、2026年4月以降は、以下の要件により年間収入の判定が行われます。
① 労働契約で定められた賃金から見込まれる年間収入が 130 万円未満(※)であること
※ 60 歳以上の者である場合又は概ね厚生年金保険法による障がい厚生年金の受給要件に該当する程度の障がい者である場合にあっては、180 万円未満
または、19 歳以上 23 歳未満である場合にあっては150 万円者(ただし、被保険者の配偶者を除く)
② 事業収入や年金収入など、給与収入以外からの収入が見込まれないこと
上記の2要件を満たす被扶養者が以下に該当する場合、原則として、被扶養者に該当するものとして取り扱うこととなります。
- 被保険者と同一世帯に属している場合には、被保険者の年間収入の2分の1未満であると認められる場合(※)
※ただし、当該要件を満たさない場合であっても、当該認定対象者の収入が被保険者の年間収入を上回らない場合には、当該世帯の生計の状況を総合的に勘案して、当該被保険者がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認められるときは、被扶養者に該当するものとして差し支えない - 被保険者と同一世帯に属していない場合には、被保険者からの援助に依る収入額より少ない場合
被扶養者の年間収入判定に係る実務対応
2026年度からの被扶養者認定の判定方法変更に伴い「労働条件通知書」等の労働契約の内容が分かる書類の添付、及び当該認定対象者に「給与収入のみである」旨の申立てを求めることにより確認することとなります。
被扶養者認定の判定は、基本給・諸手当・賞与を基準とする
実務上、労働条件通知書等の労働契約の内容が確認できる書類において規定される賃金、具体的には所定労働時間や所定労働日数等から算出される基本給、諸手当、賞与を年間収入見込額として判定を行います。時間外・休日労働に対する賃金に関しては、労働契約に明確な規定がなく労働契約段階では見込み難いものであることから、被扶養者の認定における年間収入には含みません。 なお、労働契約内容が確認できる書類がない場合は、従来どおり、勤務先から発行された収入証明書や課税(非課税)証明書等により年間収入を判定することとなります。
「給与収入のみである」旨の申立ての方法
給与収入以外の収入の有無に関しては、健康保険被扶養者(異動)届の「扶養に関する申立書」欄に認定対象者本人が記載する方法、もしくは健康保険被扶養者(異動)届の添付書類として認定対象者本人が作成した「給与収入のみである」旨の申立書を添付させる方法等による対応が想定されています。
残業増加による基準額越えの場合の対応
被扶養者の認定後、認定段階で見込んでいなかった臨時収入によって結果的に年間収入が基準額以上となった場合でも、その増加が社会通念上妥当である範囲に留まる場合には、直ちに被扶養者の認定を取り消す必要はありません。しかしながら、当該臨時収入により実際の年間収入が社会通念上妥当である範囲を超えて基準額を大きく上回っており、労働契約内容の賃金を不当に低く記載していたことが判明した場合には、被扶養者に該当しないものとして取り扱って差し支えないこととされます。
「社会通念上妥当である範囲」の判断が難しいところですが、被扶養者の年間収入が基準額以上となる場合には「年収の壁・支援強化パッケージ」における事業主証明の提出を求めることができます。これにより、当該臨時収入があくまで一時的な収入変動であり、被扶養者認定を維持することの正当性を裏付ける書類となります。
参考:
厚生労働省「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて」
厚生労働省「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いに係るQ&Aについて」