新年度が始まり、2025年度の雇用関係助成金の情報が公開されました。今年度は、企業において特に活用が進む「キャリアアップ助成金」の正社員化コース、賃金規定等改定コースで制度変更がありました。さっそく概要を確認しましょう。
目次
2025年度雇用関係助成金の新設・変更まとめ
2025年度雇用関係助成金における制度新設・変更は以下の通りです。
《新設》 特定求職者雇用開発助成金 中高年層安定雇用支援コース
就職氷河期世代を含む中高年層(35歳以上60歳未満)のうち正規雇用の機会を逃したこと等により、十分なキャリア形成がなされず、正規雇用に就くことが困難な者を正規雇用労働者(短時間労働者を除く)として雇い入れた事業主に対して助成
助成額:1人あたり60万円〔中小企業以外50万円〕
《新設》 両立支援等助成金 不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース
不妊治療、月経や更年期といった女性の健康課題に対応するために両立支援制度を利用しやすい環境整備に取り組み、就業規則等に基づき制度を利用させた中小企業事業主に対して助成
助成額:
・不妊治療のための両立支援制度を導入し、利用者が生じた場合 30万円
・月経に起因する症状への対応のための支援制度を導入し、利用者が生じた場合 30万円
・更年期における心身の不調への対応のための支援制度を導入し、利用者が生じた場合 30万円
※1事業主あたり 各1回限り
《拡充》 人材開発支援助成金 各コース
各コースの変更の詳細は、以下よりご確認いただけます。
参考:厚生労働省「人材開発支援助成金を利用しやすくするため、令和7年4月1日から制度の見直しを行いました。」
《変更》両立支援等助成金 介護離職防止支援コース
介護支援プランを策定し、プランに基づき労働者の円滑な介護休業の取得・職場復帰に取り組み、介護休業を取得した労働者が生じた中小企業事業主や仕事と介護との両立に資する制度(介護両立支援制度)の利用者が生じた中小企業事業主、介護休業や短時間勤務を行う労働者の業務を代替する体制の整備を行った中小企業事業主に対して助成
助成額:
①介護休業 40万円(連続5日以上の利用。連続15日以上の休業で60万円)
②介護両立支援制度 制度を1つ導入、1つ利用 20万円(30万円)
制度を2つ以上導入、1つ利用 25万円(40万円)
※20日以上利用。()は60日以上利用の場合。
③業務代替支援 新規雇用 20万円(30万円)
手当支給等(介護休業) 5万円(10万円)
手当支給等(短時間勤務)3万円
※5日以上利用。
※()は15日以上取得・利用の場合。短時間勤務は15日以上利用の場合のみ。
※①~③の対象事業主が仕事と介護を両立しやすい雇用環境整備を行った場合 10万円加算
※①~③それぞれ、1事業主あたり5人まで支給
2024年度で廃止の助成金一覧
・ 就職氷河期世代安定雇用実現コース助成金(中高年層安定雇用支援コース助成金に統合)
・ 派遣元特例コース助成金
・ 早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース)
参考:厚生労働省「令和7年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)」
2025年度制度変更 キャリアアップ助成金 正社員化コース/賃金規定等改定コース 概要
上記に加え、2025年度はキャリアアップ助成金の正社員化コースと賃金規定等改定コースが制度変更されました。
キャリアアップ助成金正社員化コース 支給対象者の範囲・助成額の変更
「重点支援対象者 」とそれ以外の区分を設け、それぞれに対する助成額が設定されました。
2024年度までは「有期→正規 80万円(60万円)」「無期→正規 40万円(30万円)」の助成額設定でしたが、2025年度以降は「重点支援対象者以外」に対する助成額が2024年度比で半減となっています。
なお、新規学卒者については、雇い入れられた日から起算して1年未満の者については、支給対象者から除外されています。
キャリアアップ助成金賃金規定等改定コース 支給区分の新設・助成額の変更、及び加算措置新設
有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等について、2024年度までは3%以上5%未満増額した場合に「5万円 (大企業は3.3万円)」、5%以上増額した場合に「6.5万円(大企業は4.3万円)」の助成額が設定されていました。2025年度以降、支給区分を2区分から4区分へ増やし、助成額が拡充されています。
併せて、有期雇用労働者等の昇給制度を新たに設けた場合、1事業所当たり1回のみ「20万円(大企業は15万円)」を加算する措置が新設されました。
この他、「キャリアアップ計画書の取扱い」についても変更があります。キャリアアップ計画書は従来、各コースの取り組み実施日の前日までに管轄の労働局長に提出し、認定を受ける必要がありましたが、2025年度より、届け出のみで良いこととなりました。
参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金令和7年度改正概要のご案内(令和7年度)(リーフレット)」
雇用関係助成金は、会社をより良くするために活用しましょう
雇用関係助成金のご案内をご覧いただくとお分かりになる通り、目的ごとに様々な助成金が設けられています。中小企業においては前向きな活用が望まれますが、一方で、各取り組みが「助成金を受給するため」に行われるのでは本末転倒です。また、そのような姿勢では結果的に「助成金のための申請書作成」が行われる傾向にあり、実態とは異なる内容での申請のために不支給、もしくは不正受給に該当する可能性が高いと言えます。不正に受給した助成金は、全額返還しなければなりません。また、全額返還のほか、不正受給日の翌日からの延滞金、不正受給した額の2割に相当する額も納付しなければなりません。不正受給決定日から5年間、雇用関係助成金(不正受給を行った以外の助成金を含む)は受給できません。また、公表基準に該当する場合、「事業主名及び代表者名」などが公表されます。
雇用関係助成金は、「これをやれば助成金がもらえるから・・・」ではなく、「会社をより良くする取り組みのために、助成金を活用しよう」というスタンスで検討しましょう!各雇用関係助成金の支給要件、スケジュール、対象となる取り組み等、複雑な申請手続きは社会保険労務士までご相談ください。