3月から4月にかけては、多くの企業にとっての就職・転職シーズン。社会保険関係の諸手続きを担うご担当者様にとって、一年のうちでも特に多忙を極める時期ではないかと思います。社会保険関連手続きが集中する年度末・年度初めを目前に、日本年金機構は、健康保険と厚生年金保険の届出不備や誤りの多い事例をホームページ上に公開しました。2026年2月24日時点では、資格取得届と喪失届に係る事例が掲載されています。さっそく内容を確認しましょう。
目次
社会保険被保険者資格取得届で、特に多い「記入漏れ」をチェック
出典:日本年金機構「Vol.2 令和5年9月 「被保険者資格取得届」の作成や提出時の留意点等」
社会保険の資格取得届で特に記入漏れの多い事項として挙げられるのは、以下の各項目です。提出前に必ずご確認ください。
・資格取得(該当)年月日の記入漏れ
・個人番号(マイナンバー)の記入漏れ
・短時間労働者の○(丸印)のつけ忘れ
・報酬月額欄の合計額記入漏れ
「資格取得年月日」の考え方
資格取得年月日に関しては、前号で解説した通り、「適用事業所に使用されるようになった日」となります。この年月日に関しては、労働条件通知書や雇用契約書の雇入年月日と合わせることで整合性がとれます。試用期間を設けている場合でも、試用期間の始期から資格取得となります。
「短時間労働者」の定義を確認
記入漏れの事例として「短時間労働者の〇のつけ忘れ」について言及されていますが、そもそも「短時間労働者」の定義を正しく理解できているでしょうか?
「短時間労働者」とは、「特定適用事業所」「任意特定適用事業所」または「国・地方公共団体に属する事業所」に勤務する方で、1週間の所定労働時間または1ヵ月の所定労働日数が通常の労働者の3/4未満である方のうち、次の要件をすべて満たす方のことです。
(1)週の所定労働時間が20時間以上あること
(2)所定内賃金が月額88,000円以上であること
(3)雇用期間が継続して2ヵ月を超えて見込まれること
(4)学生でないこと
「特定適用事業所」とは、1年のうち6ヵ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者の総数が51人以上となることが見込まれる企業のことです。また、厚生年金保険の被保険者数が特定適用事業所の基準に満たない企業等であっても、被保険者の同意に基づく事業主の申し出により、「任意特定適用事業所」として短時間労働者の適用拡大の対象事業所となります。
参考:日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
60歳以上の退職後再雇用時の書類添付が漏れていませんか?
60歳以上の方を退職後継続し再雇用する際、使用関係がいったん中断したものとみなし、事業主が被保険者資格喪失届および被保険者資格取得届を提出する取り扱いが可能です。
この取り扱いとする場合には、「備考」欄の「4.退職後の継続再雇用者の取得」に○をつけ、退職した後、新たな雇用契約を結んだことを明らかにできる書類を添付する必要があります。添付書類は、以下のいずれかです。
・就業規則、退職辞令のコピーなどの退職したことがわかる書類、再雇用されたことが
わかる雇用契約書および労働条件通知書等
・退職後継続再雇用されたことが確認できる事業主の証明
なお、被保険者資格取得届と同時に被保険者資格喪失届の提出が必要です。
参考:日本年金機構「60歳以上の厚生年金の被保険者が退職し、継続して再雇用される場合、どのような手続きが必要ですか。」
被保険者の住所欄は、基礎年金番号を記入したときに要記載
「個人番号(基礎年金番号)」欄には、原則個人番号(マイナンバー)を記入しますが、何らかの理由で基礎年金番号を記入した場合、「住所」欄に住所を記入します。基礎年金番号を記入し、住所の記載がない場合は、届書の再提出が必要になります。
社会保険被保険者資格喪失届は、「退職日と資格喪失日の記載誤り」に要注意
社会保険被保険者資格喪失届における届出不備や誤りの多い事例として挙げられるのは、以下の項目です。
・退職日と資格喪失日の記載不備
・70歳以上被用者不該当年月日記載漏れ
・60歳以上の方を退職後継続し再雇用する際の添付書類不備
「資格喪失日」は退職日の翌日です
中でも特に多いのが、「退職日と資格喪失日の記載誤り」でしょう。「資格喪失年月日」欄とは、「事実発生年月日の翌日」の日付となります。つまり、退職日までは被保険者であり、退職日の翌日が資格喪失年月日となります。喪失原因が「死亡」の場合も同様です。
出典:日本年金機構「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届/厚生年金保険 70歳以上被用者不該当届の届出不備や誤りの多い事例」
何らかの不備に伴い届出が返戻されることで、従業員の社会保険被保険者資格取得・喪失手続きに遅れが生じますから、現場においては正確な事務処理の徹底が求められます。従業員の入退社関連事務への円滑対応には、社会保険手続きを専門に扱う社会保険労務士へのご依頼が得策です。
参考:日本年金機構「届出に不備や記入誤りの多い事例の紹介」