ますます深刻化する労働力不足解消への対応として、企業における「多様な人材の活用」は不可欠です。多様な人材活用の選択肢のひとつに、「高齢者雇用」があります。現状、すでにあらゆる業種でシニアが活躍中ではありますが、一方で、働く高齢者の労災事故が増加傾向にあることも明らかです。
人材活用の手段としてシニア雇用を幅広く視野に入れる上では、まず高齢労働者が安心して働ける環境を整える必要があります。「エイジフレンドリー補助金」を活用し、環境整備を進めましょう。
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「エイジフレンドリー補助金」 2024年度申請受付は10月31日まで
一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会が実施する「エイジフレンドリー補助金」とは、高年齢労働者の労働災害防止対策、労働者の転倒や腰痛を防止するための専門家による運動指導等、労働者の健康保持増進に向けた就労環境改善に要した経費を補助する制度です。
エイジフレンドリー補助金の3種類のコース
エイジフレンドリー補助金には、取り組みに応じた以下の3コースがあり、それぞれに対象となる事業者要件、取り組み、補助率・上限額が異なります。
なお、すべてのコースに共通する要件である「中小企業事業者」の範囲については、業種ごとに以下の通りとなります。
補助金の対象となる取り組みとは?
エイジフレンドリー補助金の対象となる取り組みについて、確認していきましょう。
① 高年齢労働者の労働災害防止対策コース
・転倒・墜落災害防止対策
・重量物取扱いや介護作業における労働災害防止対策(腰痛予防対策)
・暑熱な環境による労働災害防止対策(熱中症防止対策)
・その他の高年齢労働者の労働災害防止対策(交通災害防止対策)
② 転倒防止や腰痛予防のためのスポーツ・運動指導コース
・「転倒防止」・「腰痛予防」のための身体機能のチェック及び運動指導等の実施
③ コラボヘルスコース
・健康教育、研修等
・システムの導入
・栄養・保健指導
各取り組みの具体的な内容、Q&Aについては、以下をご参照ください。
参考:厚生労働省リーフレット「エイジフレンドリー補助金のご案内」「エイジフレンドリー補助金Q&A」
取り組み開始は「交付決定を受けてから」。2024年10月末日までに交付申請を
「エイジフレンドリー補助金」の活用に向けて、まずは事業所内の課題抽出、必要な取り組みの検討を経て、交付申請をする必要があります。ここで注意すべきは、「発注や対策の開始は、交付申請後に正式な交付決定を受けてから行う」ことです。交付決定通知書を受けた後、取り組みに必要な発注と支払、実際の取り組みを開始し、完了後速やかに実績報告書及び精算払請求書を一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会宛に提出します。
2024年度の場合、取り組みに先立って必要な交付申請書類の受付期間は10月31日まで、支払請求資料の提出期限が2025年1月31日までとなっています。いずれも当日消印有効ですが、交付申請については申請状況と予算額との兼ね合いで申請受付期間中であっても受付を締め切ることがありますので、早めの申請が得策です。
参考:一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会「令和6年度エイジフレンドリー補助金」
シニア人材が安全に働ける職場環境作りが急務
希望する70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする改正高年齢者雇用法が、2021年4月より適用となっています。同法の適用をきっかけにシニア人材の積極活用に目を向けた企業も多かったかと思いますが、とりわけ昨今では、法令遵守の観点というよりも少子高齢化に伴う働き手不足への打開策として、高齢労働者の雇用促進を進める現場も少なくないでしょう。いずれにせよ、現場においては、高齢者の安全な就労を可能にする環境作りに目を向ける必要があります。現状、シニアが働く上で職場環境にどんな課題があるか、必要な対策として具体的にどのような取り組みが想定されるか、しっかりと検討し、補助金を活用しながら無理なく進めてまいりましょう。