【労務担当向け】年末調整初心者のための基礎知識 概要編

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この記事では、特に「初めて年末調整の業務を担当する」「年末調整の知識を整理したい」方向けの情報として、年末調整の基礎知識についてご案内いたします。

年末調整とは?

年末調整とは、各社員の正確な年税額を確認し、会社が毎月(毎日)の給与支払で徴収していた源泉所得税の合計額との差額を、精算する手続です。

年末調整の対象となる社員は、会社へ「扶養控除等申告書」を提出している人ですが、給与の収入金額が2,000万円を超える人など、一定の条件へ該当する人は年末調整の対象とはなりません。

この手続を進めるために、「扶養控除等申告書」「基礎控除申告書、配偶者控除等申告書及び所得金額調整控除申告書」、「保険料控除申告書」、「住宅借入金等特別控除申告書」などの書類を、各社員が会社へ提出する必要があります。

多くの社員にとっては、会社が年末調整を行うことで源泉所得税の精算を完了でき、確定申告等の事務処理を自分で行わずに済むというメリットがあります。

年末調整の業務スケジュールは?

年末調整業務の全体のスケジュール(一例)は、下記のようになります。

会社 社員
11月 ・対象者の確認、法改正確認
・申告書類の提出依頼、内容確認
・不備の修正依頼、未提出書類の督促など
・証明書の準備
・申告書の提出
・修正、再提出
12月 ・給与計算システムへの反映
・年調年税額の計算
・源泉徴収票の交付
・源泉徴収票の受領、確認
翌1月 ・税務署、自治体への関係書類の提出
(法定調書・源泉徴収票・給与支払報告書など)
・申告書類等の保管(7年間)
・給与計算システムの整備
・再年末調整(必要の場合)
・確定申告(必要の場合、2~3月)

11月(申告書の提出依頼・確認修正など)

対象者の確認、法改正確認
:申告書類の提出依頼の準備をします。年末調整の対象となる社員と対象外となる社員を確認したり、法改正(申告書類フォーマットや控除の改正)を確認しておくと、依頼や計算がスムーズに進められます。
申告書類の提出依頼、内容確認
:社員へアナウンスし、年末調整に必要な申告書類を会社へ提出してもらいます。書類の記載や添付された証明書類に不備がないか確認します。
不備の修正依頼、未提出書類の督促など
:提出された申告書類に不備がある場合、社員本人へ確認したり差し戻して修正を促します。アナウンスした提出期日に書類を未提出の社員がいる場合、提出の督促をします。

12月頃(年調年税額の計算・還付徴収など)

給与計算システムへの反映
:確認した申告書の情報を、給与計算システムへ登録します。12月31日時点の社員の属性情報(住所や扶養親族等の変動が少ない情報)の更新や、年末調整情報(保険料控除や住宅ローン控除等の年末調整時のみ必要の情報)の入力を行います。
年調年税額の計算
:給与等の支払金額・月々の社会保険料や所得税等の控除額・年末調整申告の情報等を元に、年間の源泉所得税を算出します。月々の累計の所得税と差額があれば、還付または徴収にて清算します。12月または1月のどちらかの給与支払と併せて清算することが一般的です。
源泉徴収票の交付
:年調年税額の計算完了後、社員へ源泉徴収票を交付します。差額を清算した給与の明細と併せて交付することが多いですが、1月31日までに交付すれば良いこととなっています。
関連:タックスアンサー No.7411「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等(国税庁)

翌1月頃(法定調書の提出・納付など)

税務署、自治体への関係書類の提出(法定調書・支払調書・源泉徴収票など)
:会社の所轄の税務署や、各社員の住所地の自治体へ、所定の書類を提出します。電子データでの提出が可能となっている書類もあり、一定の条件の会社については電子データでの提出が義務付けられています。
関連:タックスアンサー No.7455「法定調書の提出枚数が100枚以上の場合のe-Tax、光ディスク等又はクラウド等による提出義務」(国税庁)
申告書類等の保管(7年間)
:扶養控除等申告書など、申告書類等を7年間保管する必要があります。
関連:タックスアンサー No.2503「給与所得者の扶養控除等申告書等の保存期間」(国税庁)
給与計算システムの整備
:年末調整時点(12月)と比べて翌年1月の扶養控除等申告書の記載に変更がある場合、給与計算システムへ新しい情報を更新後に翌1月度の給与計算を行います。1回の年末調整業務にて新旧2年度分の扶養控除申告書の提出を依頼する会社が多いのは、このためです。
再年末調整(必要の場合)
:年調年税額の計算完了後に、扶養親族等の情報の修正があった場合、翌1月31日までは計算と清算のやり直しを行なって良いこととなっています。やり直しに対応しているかは会社次第ですが、社員本人にて確定申告を行うことでも、年税額の清算は可能です。

年末調整は義務?

上記で説明したような年末調整の処理は、会社の任意で対応しているものではなく、所得税法(第190条)で定めによって対応しなければならない義務とされているものです。

(抜粋)
第百九十条 給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者で、第一号に規定するその年中に支払うべきことが確定した給与等の金額が二千万円以下であるものに対し、その提出の際に経由した給与等の支払者がその年最後に給与等の支払をする場合(その居住者がその後その年十二月三十一日までの間に当該支払者以外の者に当該申告書を提出すると見込まれる場合を除く。)において、同号に掲げる所得税の額の合計額がその年最後に給与等の支払をする時の現況により計算した第二号に掲げる税額に比し過不足があるときは、その超過額は、その年最後に給与等の支払をする際徴収すべき所得税に充当し、その不足額は、その年最後に給与等の支払をする際徴収してその徴収の日の属する月の翌月十日までに国に納付しなければならない。

年末調整の処理を行わず、源泉所得税の徴収や納付を適正に行わなかった場合の罰則については、所得税法(第240条、第242条)に記載があります。例えば年末調整によって徴収すべき源泉所得税を税務署に納付しないことは、所得税法240条へ抵触し「十年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金」が科せられる旨が定められています。

第二百四十条 第百八十一条(利子所得及び配当所得に係る源泉徴収義務)、第百八十三条(給与所得に係る源泉徴収義務)、第百九十条(年末調整に係る源泉徴収義務)、第百九十二条(年末調整に係る不足額の源泉徴収義務)、第百九十九条(退職所得に係る源泉徴収義務)、第二百三条の二(公的年金等に係る源泉徴収義務)、第二百四条第一項(報酬、料金等に係る源泉徴収義務)、第二百七条(生命保険契約等に基づく年金に係る源泉徴収義務)、第二百九条の二(定期積金の給付補てん金等に係る源泉徴収義務)、第二百十条(匿名組合契約等の利益の分配に係る源泉徴収義務)、第二百十二条(非居住者又は法人の所得に係る源泉徴収義務)又は第二百十六条(源泉徴収に係る所得税の納期の特例)の規定により徴収して納付すべき所得税を納付しなかつた者は、十年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第二百四十二条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。ただし、第三号の規定に該当する者が同号に規定する所得税について第二百四十条(源泉徴収に係る所得税を納付しない罪)の規定に該当するに至つたときは、同条の例による。

三 第百八十一条(利子所得及び配当所得に係る源泉徴収義務)、第百八十三条(給与所得に係る源泉徴収義務)、第百九十条(年末調整に係る源泉徴収義務)、第百九十二条(年末調整に係る不足額の源泉徴収義務)、第百九十九条(退職所得に係る源泉徴収義務)、第二百三条の二(公的年金等に係る源泉徴収義務)、第二百四条第一項(報酬、料金等に係る源泉徴収義務)、第二百七条(生命保険契約等に基づく年金に係る源泉徴収義務)、第二百九条の二(定期積金の給付補塡金等に係る源泉徴収義務)、第二百十条(匿名組合契約等の利益の分配に係る源泉徴収義務)又は第二百十二条(非居住者又は法人の所得に係る源泉徴収義務)の規定により徴収すべき所得税を徴収しなかつた者

出典:所得税法(e-gov法令検索)

まとめ

Q.年末調整とは?
A.給与の源泉徴収税を年に1回再計算し、還付/徴収の清算を行う手続。情報を正確に把握するため、対象者は「扶養控除等申告書」等の書類を会社へ提出する。

Q.年末調整のスケジュールは?
A.おおよそ11月〜翌1月にかけて進めることが多い。①申告書の提出依頼・確認修正、②年調年税額の計算・還付徴収、③法定調書の提出・納付、を約3ヶ月程で行う。

Q.年末調整は義務?
A.所得税法で定められた、会社(給与等の支払者)の義務。罰則の定めもある。

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