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【学校の働き方改革】2023年度以降、「10年特例」対象の大学教員等に無期転換申込権が発生します

労働契約法改正により2013年4月から導入された「無期転換ルール」ですが、これにはいくつかの特例が設けられており、そのひとつに「大学等及び研究開発法人の研究者、教員等については、無期転換申込権発生までの期間を10年とする」というものがあります。無期転換ルール導入時から勤務する特例対象者は2023年度以降、通算契約期間が10年超に達することから、現場においては適切な対応が求められます。

まずは復習!無期転換ルールとは?

10年特例を考える前に、まずは無期転換ルールの原則を理解しておく必要があります。無期転換ルールとは、同一の使用者との間で、有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期契約労働者からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールのことです。有期契約労働者が使用者に対して無期転換の申込みをした場合、使用者はこれを拒むことができず、無期労働契約が成立します。

契約期間の途中に所定の通算期間超となる場合、契約初日時点で無期転換申込権発生


具体的なイメージとしては、図をご覧いただくと分かりやすいでしょう。
2013年4月1日以降に開始する有期労働契約が対象となり、1年更新の場合、5回目の更新時に無期転換申込権が発生します。ただし、下段の図のように、更新後の契約期間内に通算期間5年超となる場合、労働者は、契約期間の初日から無期転換の申込をすることができます。また、無期転換の申込みをせずに有期労働契約を更新しても、新たな有期労働契約の初日から末日までの間に無期転換の申込みが可能です。

無期転換は、申込時の有期労働契約が終了する翌日から

無期転換ルールについて、実務上誤解されやすいポイントといえば、「無期転換の時期」です。労働者が無期転換の申込みをすると、使用者はその申込みを承諾したものとみなされ、無期労働契約がその時点で成立します。ただし、実際に無期に転換されるのは、申込時の有期労働契約が終了する翌日からです

無期雇用は正社員とは異なります

また、もうひとつ誤解されやすいポイントとして、「無期転換後の待遇」が挙げられます。しばしば「無期雇用=正社員」と考えられているケースも少なくありませんが、無期転換のルール上はあくまで「契約期間の定めをなくすこと」に対応できていれば問題なく、正社員として処遇することまでは求められません。職務や勤務地、賃金、労働時間等は、別段の定めがない限り、直前の有期労働契約と同一となります。

その他、無期転換ルールに関する基本的な内容は、以下よりご確認ください。

参考:厚生労働省「無期転換ルールについて

大学等及び研究開発法人の研究者、教員等の「10年特例」とは?


冒頭でも触れたとおり、無期転換ルールには特例があり、研究開発能力の強化及び教育研究の活性化等の観点から、大学等及び研究開発法人の研究者、教員等については、無期転換申込権発生までの期間を10年とする特例が設けられています。
2013年度に有期労働契約を締結し、これまで契約更新を繰り返している労働者については、2023年度中に随時、無期転換申込権が発生することになります。

大学で有期労働契約を締結する教員すべてが特例対象というわけではない

10年特例の対象となる「大学等」「研究開発法人」の範囲、及び「対象者」については、以下のリーフレットよりご確認いただけます。

参考:厚生労働省「大学等及び研究開発法人の研究者、教員等に対する労働契約法の特例について

リーフレットに記載のある各種要件のうち、対象者については、「有期労働契約を締結する教員であればすべて特例対象である」と誤解されがちです。しかしながら、実際には「大学の教員等の任期に関する法律(任期法)に基づく任期の定めがある労働契約を締結した教員等」に限定されますので注意しましょう。以下、リーフレットより、特例対象者となる要件のポイントを抜粋します。

上記に該当しない有期契約労働者については、原則通り、通算期間5年超で無期転換申込権が発生しますので、今一度、各労働者について状況確認をされておくことをお勧めします。

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現場において求められる、無期転換ルールの適切な運用

2023年4月以降は、10年特例の対象者について、本格的な無期転換申込権の発生が見込まれる重要な時期を迎えます。現場においては、無期転換ルールの趣旨を踏まえ、労働者に対して適切な対応が求められます。

もちろん、有期労働契約にまつわる実務では、労働者との契約更新を行わず、期間満了をもって雇用関係終了とするケースもあるでしょう(雇い止め)。ただし、無期転換ルールを避けることを目的として無期転換申込権が発生する前に雇止めをする、使用者が更新年限や更新回数の上限などを一方的に設けるといった取り扱いは原則として認められない点に、ご留意ください。併せて、3回以上契約が更新されている場合や1年を超えて継続勤務している労働者について契約を更新しない場合、使用者は30日前までに予告しなければならないこととされていることにも注意が必要です。

契約期間の満了に伴い雇用関係を終了する労働者に対しては、必要に応じ、説明・相談に努めるとともに、キャリアサポートに係る取り組みを講じる等、慎重かつ丁寧な対応が求められます。無期転換ルールに関わる実務上の取扱いにお悩みのご担当者様は、雇用管理の専門家である社会保険労務士までご相談ください!